はっちゃんZのブログ小説

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102.特訓11(葉山編4)

「これより陳式太極拳の修行に入る。二人とも私の動きを見て真似なさい。

 これは格闘術としては勿論じゃが、

 体内で気を発生させその気を練るためのものじゃから正確に覚えなさい。

 では始めるぞ」

 

先ず隆一郎翁が動き始める。

一つ目の動きは

 ヨゥ ヂンカンダオトゥイ(金の杵で打つ)

 ランザアイ(衣服を束ねる)

 バイフゥリャンチィ(白鶴が翅を広げる )

 シェシン アォブ(斜めに歩く)

 ティショウ(膝を持ち上げて押し出す )

 チェンタン(前方に素早く踏込む )

 イェンスゥオ ゴンツィ(隠した拳を打ち出す)

 スァントゥイショウ(両手で押し出す)

 チョウディツィ(肘の底から拳を打ち出す)

二つ目の流れとして

 ダオジュエンコン(肘を巻き込みながら後方に退く)

 トイプ ヤーチョウ(肘を押さえつけて後方に退く)

 ヅゥオ ヨゥ イェマフェンゾン(馬のタテガミを分ける)

 ヅゥオ ヨゥ ヂンヂィドゥリィ(金の鶏が片足で立つ)

 ヨゥ リュウフォンスゥビィ(閉じる型)

 ヅゥオ タンビィエン(右手で鞭を持ち上げ、左に構える)

三つ目の流れとして

 ユィンショウ(両手で雲を押し出す)

 ガオタンマ(高みから相手を探る)

 ヨゥ ヅゥオ ヅァジャオ(足で蹴り上げる)

 ドンイィゴン(右踵で蹴る)

 ピィシェンツィ(体を右に回して相手を打つ)

 ペイズーガオ(背面を用いて後方を攻める)

 チンロンチュウスィ(青い龍が水から出る)

 バイユェンシェングゥオ(白猿が果物を捧げ出す)

 ヅゥオ リュウフォンスゥビィ(閉じる型)

 ヨゥ タンビィエン(左手で鞭を持ち上げ、右に構える)

四つ目の流れとして

 スアンチェンジャオ(両足を持ち上げてから踏み下ろす)

 ユィニュィチュアンスゥオ(美女が機織をしている)

 ショウトウシィ(獣の頭を抱え込む)

 チュエディロン(龍が地を這う)

 シャンプチィシン(前に踏み込み七つの力を集めて跳ね返す)

 トゥイプ クワフゥ(後方に退き虎に跨る)

 ヅゥアンセン バイリィエン(体を回し蓮の花のように円く蹴り上げる)

 タンドゥパオ(大砲のように力強く打ち出す)

 ヅゥオ ヂンカンダオトゥイ(金の杵で打つ )

 

翔は慣れない太極拳の各流れを何度も何度も実践し少しずつ習得していく。

おかしいところがあればすぐに隆一郎翁が直していく。

翔の身体がいつの間にか、

水が高きから低きに流れるように、

風が障害物をゆるやかに避けるように軽やかに動くようになり、

強い攻撃には、竹のようにしなりながらその勢いを側面や背面に流し

長い年月育った樹木のようにびくともしない強い足腰で

立てられている人形へ強く当たっていくようになった。

※この陳式太極拳の動きは老架式及び陳式太極拳36式を参考にしています。

 

最後は仙道の修練があり、それで一日の修練は終了する。

「この修行は、翔君が超能力を発揮した直後の、

 急激に落ちる体力とスピードを維持するための最初のステップじゃ。

 先ずは座禅の状態から身体にエネルギーを生み出し、それを身体中に廻す事で

 体力の維持ができ超能力を使っても変わらない戦闘力を発揮できるはずじゃ。

 最終目標は、戦いながら自由自在に体内で気を練り、

 衰えることない超能力や格闘術が行使出来ることだから目的に適うと思う」

 

仙道における「小周天法」のポイントは呼吸法である。

その呼吸法は、深呼吸によく似ているが、意識でコントロールする点が異なる。

『調息(別名腹式呼吸)の方法』として

 座禅を組み、下腹をグッーとへこませて、

 一度だけ体に溜まった濁気を口から吐き出す。

 そして吸気行動に入り、鼻からゆっくり息を吸い込む。

 吸気行動と同時に必ず下腹をふくらましていき、肛門をグッーと締め上げる。

 空気を吸いきったら、すぐ呼気行動に移る。

 呼気行動は準備呼吸のように口からゆっくり息を吐き出していく。

 呼気行動と同時に下腹をへこませ、肛門をゆるめる。

以上の要領で、

吸気と呼気を途中息が途切れることのないようにゆっくりとくり返していく。

はじめは吸・呼気それぞれ五ずつ数えながら行ない、さらに十ずつにし、

最後に呼気十・呼気十五ぐらいまで無理なくできるようになったら

次の「武息」に入る。

 

武息とは、武火呼吸といい、文息・文火呼吸と対になる大事な呼吸法である。

意識をかけた強い呼吸を武火、意識をかけない平穏な呼吸を文火としている。

ただし、意識をかけない平穏な呼吸とは、

無意識の腹式呼吸であり武息より難しい呼吸だった。

武息が本当にできるようになって、呼吸から意識をはずすと自然にこの呼吸になっているらしい。                                      

 

『武息呼吸の方法』として

 はじめに大きく下腹をへこませて、肺に溜まった濁気を完全に口から吐き出す。

 すぐ鼻から吸気にはいる。

 息を五つ数えながら吸いながら、下腹をふくらまし肛門を閉める。

ここまでの流れは調息と同じだが、

吸気を意識的に下腹へ送り込む(意識点を丹田へ降ろしていく)点が

調息とは異なるところだった。

それにより「気」は丹田まで下がっていく。  

                           

次に息を止め、

下腹・肛門の状態をそのままにして、丹田に意識を集中させる。(内視法)。

同時に耳で丹田の音を聞くようにする(返聴法)。

心の中で五つ数える。

数え終わったら、調息と同じように五つ数えながら、

下腹をへこませ肺の空気を、肛門をゆるめながら鼻から吐いていく。

 

武息により、下腹部に陽気が集まってくると下腹部がとても熱くなる。

この段階からさらに意識を強めていくと、やがて丹田に圧力のようなものが生まれ、

震えが全身へ伝わるようになる。

この時期になると、やがて気が丹田から上下へあふれて流れるようになる。

小周天法とは、丹田から会陰、尾閭(尾てい骨)、命門(腰椎、臍の裏)、夾脊(脊椎骨の中段)、玉沈(大脳の後方の下あたり)、泥丸(上丹田、頭部の中央)、印堂(眉間)、膻中(臍の上四寸二分の場所)、そして丹田と還る経路を気で廻す方法である。

最初の尾閭、夾脊、玉沈までを開放する時に大きな衝撃が伴うらしい。

泥丸にいたるところで呼吸法は文息へ切り替える。

泥丸にゆるく意識をかけていると気の熱さが涼しいもの変わり、

頭が冴えて記憶力がよくなる。 

そこから印堂、膻中、丹田へと廻す。これにより一周が完結する。

 

翔はこれらをベースに太極拳や自らの桐生派格闘術を使いながら体内で気を廻し、

超能力を使うたびに削られる体力を補充しながらの修行を続けた。

ある程度は出来るようになった頃、

研究所の京一郎から超回復剤『がんばる君』完成の一報が入った。

やはり継続時間は1時間が限度でその後は動けなくなるものだった。

(つづく)