金曜日の夜にとうとう記憶にある痛みが襲ってきた。
夫へすぐに声を掛けて、
入院グッズの詰めたカバンと一緒に病院へ連れて行ってもらった。
生まれるにはまだ時間がかかることを伝えて、外で待ってもらった。
夫は美波へ連絡しているみたいだったが、
電車時間も終わって明日の朝に来ることになったようだ。
だんだん痛みと強張りの感覚が短くなってくる。
呼吸を整えて、その時を待った。
そこからあの時の痛みと苦しみが始まった。
二回目なので不安もなく思ったより早く軽い出産だった。
まず一人目の声が響き渡った。
しばらくすると再度あの痛みと苦しみが始まった。
そして二人目の声が響き渡った時に静香から安堵の涙が出た。
二人の赤ちゃんを抱きしめて、交互にその可愛い頬へ口づけをした。
部屋へ運ばれていくと緊張している夫が入ってきた。
双子を一人ずつ抱きしめて見せると夫が笑っている。
夫へ抱きしめるようにすすめる。
「静香、ありがとう。よくがんばったな。おお、よしよし」
『こんなにちっちゃい、壊れそうで怖いなあ』恐る恐る交互に抱っこしている。
静香は大仕事を終えてほっとして家族を見つめていた。
当日は新生児ルームで眠っている雄樹と夏姫に母乳を飲ませに行っている。
翌日急いで札幌へ戻った美波は、二人を大喜びで抱っこしている。
二人は静香の隣に眠っている。
夫はずっとマスクをつけて見つめている。
嫌がる夫を説得して月曜日からは仕事へ行かせた。
病気じゃないから休ませる必要はなかったからだった。
『もう少しすれば家で一緒に暮らすから』と安心させた。
夫は後ろ髪を引かれるように仕事へ行った。
1週間後、医師より母体も子供たちも大丈夫という診断が出て、
夫へ連絡し病院に迎えに来てもらった。
家に帰ってからずっと夫は子供二人のそばから離れなかった。
来週土曜日には神戸から夫の両親と妹夫婦、仙台から母親と兄夫婦がくるらしい。
(つづく)