はっちゃんZのブログ小説

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15.誕生

金曜日の夜にとうとう記憶にある痛みが襲ってきた。

夫へすぐに声を掛けて、

入院グッズの詰めたカバンと一緒に病院へ連れて行ってもらった。

生まれるにはまだ時間がかかることを伝えて、外で待ってもらった。

夫は美波へ連絡しているみたいだったが、

電車時間も終わって明日の朝に来ることになったようだ。

 

だんだん痛みと強張りの感覚が短くなってくる。

呼吸を整えて、その時を待った。

そこからあの時の痛みと苦しみが始まった。

二回目なので不安もなく思ったより早く軽い出産だった。

まず一人目の声が響き渡った。

しばらくすると再度あの痛みと苦しみが始まった。

そして二人目の声が響き渡った時に静香から安堵の涙が出た。

二人の赤ちゃんを抱きしめて、交互にその可愛い頬へ口づけをした。

 

部屋へ運ばれていくと緊張している夫が入ってきた。

双子を一人ずつ抱きしめて見せると夫が笑っている。

夫へ抱きしめるようにすすめる。

「静香、ありがとう。よくがんばったな。おお、よしよし」

『こんなにちっちゃい、壊れそうで怖いなあ』恐る恐る交互に抱っこしている。

静香は大仕事を終えてほっとして家族を見つめていた。

 

当日は新生児ルームで眠っている雄樹と夏姫に母乳を飲ませに行っている。

翌日急いで札幌へ戻った美波は、二人を大喜びで抱っこしている。

二人は静香の隣に眠っている。

夫はずっとマスクをつけて見つめている。

嫌がる夫を説得して月曜日からは仕事へ行かせた。

病気じゃないから休ませる必要はなかったからだった。

『もう少しすれば家で一緒に暮らすから』と安心させた。

夫は後ろ髪を引かれるように仕事へ行った。

 

1週間後、医師より母体も子供たちも大丈夫という診断が出て、

夫へ連絡し病院に迎えに来てもらった。

家に帰ってからずっと夫は子供二人のそばから離れなかった。

来週土曜日には神戸から夫の両親と妹夫婦、仙台から母親と兄夫婦がくるらしい。

(つづく)