はっちゃんZのブログ小説

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21.美波の憂鬱

最近、友人の香山さんがやたら美波へ意地悪をしてくるため気分がすぐれなかった。

美波が何か悪い事でもやっていれば謝ろうと理由を聞いてみても、

『別に』と答えるだけで理由がわからないままだった。

米子にいる時にも同じようなことを何度か経験していて慣れてはいるが

理由無くそのようにされることにただただ気持ちさを感じた。

授業内だけでなくサークルでも美波の居ないところでも同じようだった。

でも冬休みに香山さんが市内のマンションを引越すると聞いてほっとした美波だった。

 

冬休みになるとウインタースポーツ以外で彼女と顔を合わせることもないし、

できるだけ嫌な気持ちになることを避けられた。

そのうち彼女がサークルからも抜けると聞いて、不思議に思っていたが

家庭教師をしている中学生の進学準備に忙しくなり、

美波もかかりっきりとなって、あまり彼女のことは意識に上らなくなった。

特に家庭教師の中学生は、

いつでも携帯電話で聞いてくるので気が抜けなかった。

素直で勉強の良くできる女の子であり、

お姉さんとして色々と相談に乗りながらの関係が続いている。

家庭教師を始めて成績が順調に上がってきており、

模試結果から見ても受験日の体調に注意していれば

志望校には合格できると思っている。

 

しばらくして噂で香山さんが休学したと聞いた。

引っ越したばかりのマンションは早々に引き払われ、仙台の実家へ帰ったらしい。

授業も熱心で前田さんとも楽しそうに付き合っていたので不思議だった。

実家の家業がうまくいかなくなり香山さんもお手伝いが必要となったらしい。

 

のちに芳賀さんから、香山さんの友人から聞いた話として

香山さんは前田さんを都合の良い男性として利用していたこと

香山さんは1年生夏にはお見合いして婚約者がすでにいたこと

前田さんがそれに非常にショックを受けてサークルを辞めたことを聞かされた。

その後、美波は彼とたまにキャンパスですれ違うも目も合わせなくなった。

しかし、美波が社会人になってから一番驚いたことは

当時、前田さんが本当に好きだったのは、美波のことだったと聞いた時だった。

(つづく)