はっちゃんZのブログ小説

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12.臓器売買組織を壊滅せよ

ある日、事務所を東南アジア系らしき女性が訪れた。

【依頼内容】

依頼人氏名:モニカ サントス様。25歳。

依頼人状況:新宿内キャバクラ穣

種類:恋人(ジョン ガルシア 30歳)を捜索。

経過:来日後今までずっと土木作業員をしていたが、

   2週間前に空き家に昼間いるだけで大金が入ってくる割のいい仕事に就いた。

   スナック『ZOU』がたまり場。

   ここ1週間家に帰ってこない。

   彼は健康でパワフルですごくすてきな恋人。

   ※依頼人が少しカタコトの日本語だったのでこのような文章になりました。

 

先ずは、スナック『ZOU』から調査開始した。

とりあえずロングヘアーで東南アジア顔に変装をして、お客さんを装い店に入った。

薄暗い店ではあるが、多くの東南アジア系の客でザワザワして熱気にあふれている。

カウンターをすすめられたが、断って部屋の隅にあるボックス席を選んだ。

天井には大きなミラーボールが回っている。                                             

これでクモ大助の居場所が決まった。

皮ジャンのポケットから、そっとクモ大助を放しソファと壁の間へ待機させた。

ビール1本だけ飲んで適当にスマホで遊ぶフリをして3000円払って店を出てきた。

奥からママさんらしき女性とガラの悪そうな親父が翔をじっと見ていた。

ここからは、盗聴や盗撮がメインとなる。

店が閉まるまでは相当に時間があるので事務所に戻って準備に入った。

情報収集で今晩は戻れないことを百合に話した。

 

翔は再度変装し、スナック『ZOU』の隣の漫画喫茶の一室で時間を過ごした。

やがて『ZOU』の閉店時間が近づいてきた。

タブレットで操作もできるが、簡易3D装置を目の部分にセットし指示をした。

店が閉店となり照明も落とされているため移動は容易であった。

クモ大助の視界も良好で、体色を同化させ機材の影を伝って天井まで到達させ、

ミラーボールの真上に移動させ身を伏せさせた。

ここだけが部屋の全てが見えて、かつ誰からも見つからない場所だった。

「あんた、今日来たあの長髪のでかい身体の男、覚えてる?」

「うーん、あのビールだけ飲んで帰ったしみったれか?」

「あの身体ならちょうど良くないかい?今度の仕事に」

「うーん、そうだなあ。この前のジョンと骨格も似ているしいいかもなあ」

「じゃあ、今度来たら、うまいこと言って睡眠薬でも飲ませるかい?」

「お前は人を見たら臓器としか見えない、こええ女だよなあ」

「それもこれもあんたがあんな奴らに借金するからこんな羽目になってるんだろ?」

「そりゃあそうだが、俺はお前にこの内臓を取られそうで怖いんだよなあ」

「お前さんみたいな生活している人間の臓器なんぞ、入れられた方が迷惑さね」

「ひでえことを言うよなあ。でも良かったボロの臓器で」

「そうそう、あんたは私だけを喜ばせておけばいいのさ」

「はいはい」

「それと今度の商品はどうなってるの?」

「ああ、あいつには『3日後の金曜夜11時くらいに友達に黙って飲みに来い。

 大仕事だからお前にだけ儲けさせてやるから!』と言ってるから大丈夫だろ」

「あの子はあれほどの身体しているから相当になるね。

 しかしあの新宿のビルの先生は気持ち悪いよねえ。見ているだけで身震いしちゃう」

「ああ、でもモグリの医者にしては腕もいいし、

 外科技術だけでなく整形も堕胎も得意だから重宝な先生だぜ」

「あのジトッとした爬虫類のような目を見ていると気持ち悪くなるわ」

「お前、そういうなよ。あの先生のお蔭で俺らも商売できるんだぜ」

「そんなことわかってるけどさあ、でも死体の処理はどうしてるんだろうねえ」

「しっ、ていげいなことは口にするんじゃねえ。俺らが危なくなっちまう」

「はいはい、くわばらくわばら」

 

またもや偶然とは言え、大きな犯罪と出会ってしまったようだ。

クライアントには、もう亡くなっていることを伝えてもいいが、

彼を愛する彼女には彼の死体がないとわかってもらえないと感じた。

3日後にはまた一人の人間が殺されることを知って無視するわけにはいかなかった。

 

すぐさま事務所に戻り、Ryokoにあらゆるパスワードを入れて検索した。

ニュースからの抜粋

①臓器売買事件に関しては、噂段階ではあっても明確なものはない。

 臓器のない死体は海難事故以外では発生していない。

②人間の消失事件に関しては、日本では年間数万人が行方不明となり、

 原因不明の死体もそれと同数くらい発生している。

 人身売買も人間消失には関係している可能性が高い。

④堕胎した胎児死体は闇市場で処理され、生きている子供は売られる。

 

モグリの医師情報はなかなか確定できなかった。

そこでなりすましで

「子供出来ちゃった。新宿あたりで内緒で処理できるところ知ってる人いない?

 お金はありません。どうしよう・・・困っちゃった、エーン(泣)」

とつぶやいてみると、一気に会話が成立していく。

また聞き情報も含めて少し情報が入ってきた。

 

医師名:陳 果捨

住所:新宿の○×ビル1階に診療室。

情報:腕は優秀。堕胎は5万円。妊娠何か月でも引き受ける。

 

こうなれば浮浪者情報も集めるしかなかった。

翌早朝、浮浪者に変装し事務所を出発。

目的のビル付近で情報を集める。

①医者は昼過ぎに出てくるが確かに勤務している。

②毎日のように女性が訪れている。

③金曜日の夜中に冷凍車が横付けされる時がある。

④時々中国系らしき中年が部下と共に来院する。

 

診療所の周りを調査しているとこちらを見る視線に気がついた。

すぐに離れて早足で遠ざかろうとするとアジア系の人間に周りを囲まれた。

「おまえ、たれね? なまえ いう よろし」

「いえ、偶然通り掛かっただけですから許して下さい」

「あやしいあやしくないは、わたし きめる あるよ」

皆ナイフを出して、ニヤニヤ笑いながら翔を見ている。

翔はこれくらいの奴らは怖くはないし、叩きのめしてもいいが、

それでは警戒されてしまうしどうしようかと思っていると

「お前達、とうした? そいつ たれ?」

「ボス、わからない、こいつ診療所 しらぺてた」

「お前、ちょと ついてこい。逃けたら 死ぬあるよ」

ボスらしき人間の後ろをついていきながら、

打開策を考えているうちに、診療所の隣の部屋へ連れ込まれた。

そして、その部屋には多くの男性や女性が檻に入れられていた。

「男は必要な物 取ったらワニのエサになる ある、

 女はセクス専用にされて麻薬を打たれてさいこは 死ぬたけね。

 ウカイグループもかんぱってるね。ははは」

 

翔は、彼らを救出するしかないと決意した。

悲しい表情で床にひざまずいてボスに哀れな風に近づいて油断させ、

突然銃を持つ手を握った。

指のツボを押さえているので引き金の指は動かせない。

「あっ?お前、何するある。おとなしくするね。お前 にけられないあるよ」

ボスのみぞおちに当身をして、意識を失くさせると、

身体を盾にして手下のナイフから身を守った。

部下達は戸惑っていた。

ボスが風采の上がらない中年の浮浪者にやられたのだ。

我先に子分たちは逃げて行った。

翔は警部に連絡して、人質を救出しボスを逮捕させた。

『スナックZOU』の夫婦も逮捕された。

 

クライアントには、辛い調査結果を伝えねばならなかった。

『ジョンは1週間前に臓器を抜かれ、新宿下水道に飼われてワニに食べられた』と。

 

翌日の新聞はこのニュースで持ちきりだった。

本当は一味を一網打尽にしたかったが、

最後まで待っていたら多くの人が死んでしまうので仕方なかった。

ここからモグリの医者、組織、全ての情報は途絶えた。

(つづく)