はっちゃんZのブログ小説

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4.霊査2 須田範宣氏の証言(第2章:いつまでも美しい女)

多摩湖から自宅へ戻った遼真と真美は、食事の後に早速準備に入った。
祈祷所にはすでに
小橋刑事が運んできた古いガーデニング製品と
須田さんの霊が入っている|人形《ひとがた》を設置している。
二人は水垢離をし身体を清めてから作業へ入った。
先ずは須田さんから色々とお話を聞くことにした。
人形(ひとがた)に宿る須田さんを呼び出す。
周りをキョロキョロしながら須田さんが出てくる。
「須田さん、ここは我々の家ですから安心して下さい。
 そこでゆっくりとしていただきましたか?」
「はい、久しぶりに落ち着いた気持ちでいました」
「それは良かった。
 では今から色々とお聞かせください。
 色々と確認をしてあなたにご納得頂ければ
 必ずあなたをご先祖様のところへ
 お送りしますから安心して下さいね」
「では、須田さん、あなたがお住みになっていた場所はどこですか?」
「はい、荒川の河川敷で簡単な家に住んでいました」
「今でも行けば場所はわかりますか?」
「ええ、居なくなって何年も経つからもう家は無いと思います」
「なぜ死ぬ事になったのですか?」
「はい、何回目かの献血をした時、
 突然お医者さんから
 『奥の部屋へ来てください。ちょっと調べる事があります』と言われて、
 奥の部屋に行って注射をされてから意識が無くなり
 気が付いたら多摩湖に沈んでいたのです」
「どこで献血されたのですか?」
荒川区にある河川敷の近くの古いビルの中にある献血センターだけど・・・
 そういえば、思い出した。
 ある日、河川敷に知らないお医者さんと看護師さんがやって来て
 そこに住む浮浪者全員を無料診察してくれたことがあって
 その時、私だけ別の場所へ呼ばれて
 『須田さん、とても健康ですばらしい血液です。
  こう言ってはなんだけど、
  あまりに良い血液なので驚きました。
  もし献血してくれれば|何某《なにがし》かの謝礼は払えますよ。
  ただし、これは他の人に言わない様にして下さい。
  他の人の血液では献血も出来ないし、
  謝礼なんて無理なくらい悪いですからね。
  仮に仲間にばれたら須田さんも都合悪いでしょ?
  まああなたが定期的に献血して頂ければ
  そのおかげで助かる患者さんも多いですから。
  如何ですか?
  実はこの中ではあなただけが合格しています』
 と言われて、
 それはありがたいことだと思い、しばらくして献血に行きました」
「その献血した場所は、この地図のどこですか?」
「ここのビルだったと思います」
「わかりました。この別荘は覚えていますか?」
「いえ、初めて見ます。立派な別荘ですね。
 ただ死んですぐにこの別荘を見た様な気がします。
 ちょっと待って下さい・・・・
 はい、確かに私はこの別荘の中で死にました」
「その時のことを覚えているのですか?」
「はい、今、思い出しました。
 最初その別荘の地下室で眠らされていました。
 身体へ太い管を繋がれて血がドンドン出ていました。
 気がつくとその部屋の天井辺りから見下ろしていて
 私はその時にはすでに死んでいました」
「須田さん、ありがとうございます。
 もうそろそろご先祖様に会いにまいりますか?
 皆さんお迎えに来る頃だと思いますが・・・」
「うーん、みんなに会いたいけど
 せっかくだから
 この事件が終わってからではいけませんか?
 私も何のために殺されたかを知りたいのです。
 調査の折には一緒に隣に居させて下さい」
「一緒に居て頂ければ色々とお聞きできますから助かります。
 確かに須田さんは、湖でずっと考えて居られた訳ですから
 納得してから成仏したいですよね?
 こちらこそよろしくお願いします」
須田さんは嬉しそうな顔をして人形(ひとがた)へ入って行った。 
 
次に念写作業へ入った。
もちろん捜査資料は絵だけでもいいのだが、
写真の方が細かい所まで写す事ができるのでより役立つ筈だった。
遼真がサイコメトリーで連続した映像記憶を呼び出し、
その内の一つの画像のみに固定して真美へ送り、
真美がその画像を念写する作業だが、
遼真が脳裏を流れる画像のある場面を固定し続ける作業や
遼真から流れてくる画像を真美が克明に念写する作業は非常に力が必要だった。
『今夜は相当に力を使う事になるので明日が日曜日で良かった』と遼真は思った。
昼間のあの様な環境では、
周りからどのような霊が寄って来るかわからないため、
強力な力を使っていて、
もし自らの霊体への守りが手薄になって
悪霊にでも憑依されれば大変な事になるのだった。

一人の女の写真
二人の男の写真
クルーザーの写真
別荘と洋館の写真
ようやく6枚の写真が出来上がった。