はっちゃんZのブログ小説

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12.サークル

大学の講義も最初は高校時代の延長なのでそれほど難しくはなかった。

サークルはとても楽しかった。少しずつ友達も増えてきている。

みんな受験から解放されての大学生活なので大いに羽を伸ばしている様子だった。

土日の休みには女の子同士で札幌市へ出掛け、

ウィンドウショッピングや映画やスイーツ探索をした。

北海道はスイーツ王国で

使用される果物や乳酸品が新鮮で種類が多かった。

小樽で食べたルタオのケーキも美味しかったが、

札幌にはいたるところに色々なスイーツの店があった。

特に市電の西4丁目駅の近くにあるフルーツタルト専門店は、

以前冬に来た時に「さくらももいちごのタルト」を食べて以来のファンだった。

旬の色鮮やかでとても美味しいフルーツを敷き詰めたタルトが並べられており

ケーキ1品は500円から1000円くらいまであるが、

ケーキセットで頼めばどんな金額のケーキも700円で食べることができてお得だった。

 

サークルやゼミの女の子同士で出かけるとたまに男性のことが話題に上る。

『ふーん』と言う感じで聞いている。

美波は昔からファザコン気味な性格なので

同世代の男の子に好意以上の気持ちを持ったことはなかった。

昔から友達が男の子の話を出しても聞いてはいるが

自分から話すような気持ちになった存在の男の子はいなかった。

恋心という感じも全く記憶にないのできっとないのだと感じた。

でもそうだからと言って寂しいとは一切感じなかった。

毎日のテニスや勉強、そして女の同士の他愛もない会話が楽しかったからだ。

 

そんな中、サークルの先輩の前田さんのことが出ることもあった。

前田さんはサークルでは幹事役の先輩で明るく場を盛り上げることが上手だった。

サークル部屋に実家で採れた果物をたくさん持ってくる先輩で

実家は隣町の余市にあり、果物農家を営んでいて、そこから通学している。

サークルの女子には結構人気があるようで

知っている人なら誰の頼み事も一切断らないし

最後まできちんと責任を持ってやってくれる優しい人らしい。

 

前田さんは一度ダブルスを組んで試合をして以来、

何かと美波へ話しかけてくる機会が増えてきて好意は持っている。

ただ彼女たちの話を聞いていると前田さんを

『ただの便利屋さん』のような扱いをしている印象を受けた。

友人の1人に仙台から来ている香山さんという女の子がいる。

由緒正しい大きな家のお嬢様らしく、

「結婚相手は親が決めるので、遊ぶのは今しかないから」と笑っているのを聞くと

『ふーん、そんなものなのか』と聞いているだけだった。

(つづく)