はっちゃんZのブログ小説

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124.首都を防衛せよ11

大井埠頭の冷たい風が翔の頬を叩いた時、ふと我に返った。
すでに大勢は決していたが、
哀れにも機械化兵や獣人化兵は最初に命令されたまま、
自ら戦闘を止めることはできないのだった。
自衛隊も兵器などを復旧させ、
従来の役目を果たしに埠頭へと集まっている。
選手交代ではないが、
両一族は、投入した最新武器やその破片を回収しながら徐々に後退して行った。
バトルコンボイも既に帰路へと着いている。
そして、それに代わるように陸上自衛隊の師団が到着し戦闘が開始された。

陸上自衛隊は、
戦車やバズーカ砲などを投入し正確無比に機械化兵を倒していく。
歩兵部隊も動きの鈍くなった獣人化兵を拘束していく。
沖に停泊している「ドリーム号」へも
海上自衛隊員がヘリコプターで降下し船内を制圧していく。
敵は全員、捕まると自殺をするようにプログラムされているようで
拘束された敵はその場で自殺した。
そして全ての戦闘は終了した。

翔が百合の待つバトルカーへ近寄った時、
警視庁から飯塚警部がパトカーで到着した。
「翔、大丈夫だったか?」
「はい、何とか持ちこたえました」
「それは良かった。しかし、恐ろしい敵だったな」
「はい、とても強かったです。それはそうと街はどんな様子なのですか?」
「何とか暴動は鎮圧できたが、どの暴動も首謀者らしき人間は捕まっていない。
 うまく逃げられたのかもしれないな」

この事件は、結局敵の事も何もかも不明のまま終結した。
機械化兵とか獣人化兵の写真を掲載する週刊誌もあったが、
すぐにネットから「フェイクだ」とコメントが大きく炎上してうやむやに終わった。
色々と嗅ぎまわる記者もいたが、結局何も情報が入手できずに終わった。
日本国政府は、国民の不安を煽る必要は無いと考えて「反政府デモ」のみ報道された。
今回の事件が、本当に国家の危機であったことを理解している人間は少数だった。

相変わらず日本国民は、
マスコミによる政治家の言葉狩り
芸能人や政治家の不倫など派手な報道に踊らされている気楽な毎日だった。
70年間以上、戦争に巻き込まれていない国に生まれて、
日本人の血が戦争で流されることがなかった。
平和憲法があるだけで日本は戦争も仕掛けられることもなく平和だと信じ、
それ以外の世界には目を向けず毎日を享楽的に生きている。
その平和は悪意のある人間により一瞬で終わることを全く想像できない人達で
ある意味、非常に能天気で自分勝手で幸せな国民と言えた。
しかし、このたびの事件は近隣諸国では戦闘情報を収集していたようで
その後、近隣国家からの日本政府への恫喝行為のなくなったことが
恫喝され続けてきた日本政府には嬉しい出来事だった。

「翔さん、おかえりなさい。良かった、無事で」
「うん、疲れたよ。百合、もう帰ろうよ・・・」
バトルカーの助手席で待つ百合にそっと口付けをした。
その瞬間、1時間のタイムリミットが来た。
全身が一切動かせなくなってしまった。
百合はバトルカーを自動運転モードにして事務所に戻った。
翔は動かない身体で意識を何とか回して体力を回復しようとがんばった。
その甲斐あって、事務所に着く頃には何とか身体が動くようになった。
そして、いつものように美味しい夕食をとり
コーヒーを飲み、
いつものように二人で愛し合った。


その夜、翔は瞬時に生身の人間が粉々の炭になり、
パラパラと散っていく夢を見て叫び声を上げる。
悪夢にうなされる翔を優しく胸に抱きしめる百合。
翔はふたたび百合の甘く優しい香りに包まれて眠った。
明日になればまた新しい依頼が翔を待っている。
(つづく)

 

以前以下あとがきでこの物語は終わりと書いていましたが、別の媒体「小説家になろう」へ投稿し色々と推敲していくと新しい物語が出来始めました。今回から外伝を始めとして、物語が進み始めましたので再度開始することとなります。

今度は学園物になります。よろしくお願いします。

 

あとがき

拙い小説でしたが、長い間読んで頂きありがとうございました。

この物語はとりあえず今回で終了となります。実は次回シリーズとして「殺人ウィルスから日本を救え」を始めるつもりだったのですが、現在のコロナ拡大により同じ展開になりそうだったので筆を止めました。

もしご自身が縦横無尽に能力を使役する主人公でなく、突然不思議な超能力に目覚め、その力がいつ発動するかわからない場合として読んでみて下さい。緩い流れのストーリーの意味がご理解頂けると思います。

さて次回シリーズの紹介ですが、この物語後半に出てくる桐生一族の「妖シリーズ」に出てきた送霊師の若い二人の物語を作成中です。

一日も早く皆様のお目にかかる事ができますようにがんばります。