はっちゃんZのブログ小説

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19.シシャモ祭りとラムジンギスカン

翌週、鵡川町で『シシャモ祭り』が開始されているため、

ドライブがてら鵡川港へ向かった。

鵡川町に入ると道中に多くのシシャモ販売店が並んでいるのでそこで買ってもいいが、

「『鵡川のシシャモ』は鵡川港で上がったものが本物」と同僚に言われたからだ。

鵡川港には、水産の店は1軒だけで船がたくさん停泊している。

もう肌寒いので母親と子供たちは車に残して慎一だけで買い物をした。

オス20匹3セット、メス20匹3セットを買って、1セットずつを

日下実家と仙台後藤家へ宅急便で送る手配をした。

残りの1セットずつは今週も美波が来るので一緒に食べることとした。

 

街の幹線道路には『シシャモ祭り』の幟がはためいている。

鵡川町内に設営されたシシャモ祭りの会場は観光客でごった返しており

多くのテーブルにはアルミホイルの置かれたホットプレートが設置され

今年上がったシシャモが焼かれており、

匂いだけでシシャモを腹一杯食べた気になってしまうくらい煙が上がっている。

 

鵡川のシシャモ祭りの帰り道に千歳市を通る国道36号線から右折して

苫小牧市にある『ノーザンホースパーク』へ立ち寄った。

広大な敷地のなかに多くの馬(約80頭)が生活していて、

かわいいポニーたちのショーや乗馬体験、

大自然のなかでの多彩なアトラクションを揃えている「馬のテーマパーク」だった。

駐車場で子供たちに母乳を飲ませながら、

子供たちが大きくなったら大喜びしそうだと夫婦で笑いあった。

 

その夜は美波が芳賀さんという友達を連れてお泊りにきた。

彼女達も鵡川町のシシャモは初めてらしく目を輝かせて食べている。

今まで食べていたシシャモは『カラフトシシャモ(キャペリン)』という魚で

鵡川町のものとは学術的、生態的に全く異なっていた。

店の人にはホットプレートにアルミホイルをひいてその上で焼くように言われたが

静香が持っていた七輪で焼くと魚から脂が真っ赤に熾る炭へと落ちて煙となる。

その煙がシシャモそのものに炭の香りをつけて生臭さを消していく。

オスは、大きさも厚さもメザシ並みで

頭から齧ると脂が乗っており、深い旨味が口中に広がる。

メスは、オスの半分くらいのサイズでお腹はキャペリンほど大きくない、

齧るとお腹の中にある卵が身と共に口中へほどけ出る。

その食感は大味なキャペリンとは異なり、

細かい卵は舌で潰れるくらい柔らかく、ほんのり優しい甘さが広がる。

『やはり本場物を一度は食べないとわからないもの』と皆納得した。

 

焼物の続きとして『ジンギスカン』にも挑戦した。

タレは市販だが、肉は『ラム肉』を用意した。

生後1年以上経つ羊の肉は昔から家庭で良く食べられており『マトン』と呼ばれる。

『ラム肉』とは、本来生後一年以内の子羊の肉を指すが、

羊肉の脂は人の体温では吸収されないため、

低脂肪高タンパク質で最近女性に人気の肉だった。

この肉はそのラムの中でも特に母乳しか飲んでいない仔羊のもので

柔らかくジューシーで特有の臭みが殆どなかった。

羊特有の匂いと言われているものは、元々草食動物特有で葉緑素由来のものらしい。

ただその成分の殆どが体脂肪に含まれている。

昨今の牛はダイズ、トウモロコシなどの穀物や干し草などを食べさせているので

牛肉にそのような匂いはしないだけで本来は同様の匂いがあるはずであった。

肉に含まれる脂分が鉄板部分から落ちるタイプのホットプレートで

ラム焼き肉パーティを開いた。

芳賀さんというお客さんを迎えて嬉しいのか雄樹と夏姫の始終機嫌が良かった。

(つづく)