はっちゃんZのブログ小説

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10.捜査1(友人恵理那)(第7章:私の中の誰か)

 遼真は、瑠海の和御魂と荒御魂から念写された多くの写真を見ながら捜査に入った。
瑠海の事件は、転落現場付近に監視カメラも無く普段人通りも少ない場所で
目撃証言も瑠海を見つけたサラリーマンだけだったため、
警察では転落事故として処理されているらしい。
遼真は、ネットニュースを調べて瑠海の写真を見つけた。
写真は小学校の卒業写真だが、小学生にしては大人びた顔の可愛い女の子だった。
遼真は、瑠海の家や転落現場や通っていた中学校などを確認した。
虫型盗聴器天丸からの情報では、
当然のことながらお葬式からそれほど時間が経っていないため、
瑠海の両親は、毎朝毎晩、瑠海の真新しい位牌へ手を合わせている。
妹の愛美がいない両親だけでいる時の会話は、
「なぜあの子はあんな場所で死んだんだろうね」
「私が塾に迎えに行けば、あの子はあんなことにはならなかったのに」
「私たちにもっと何かできることがあったんじゃないか」
「本当に事故なんだろうか」
「警察官に新しい制服や下着をつけていて不思議だ、本当に事故ですか?
 と聞いても、残念ですが娘さんは足を滑らせた事故だとしか言わない」
「あの子のことで最近何か気になる事は無かったか?」
「はい、とくには無かったと思います」
「お前がいつも見ていて何も無いのなら・・・やはり事故なのか・・・」
「それよりお医者さんから言われた臓器移植をして本当に良かったのでしょうか」
「そうだな・・・でももう瑠海も死んだし終わった話だと思うけど・・・」
「私たちの知らない子供の中で元気に生きていると考えればいいのでしょうか・・・」
「死んだ後、臓器を渡すことがあの子の意思なら、あの子の思いなら、
 あの子の優しさなら、あの子の考えに従うしか無かったけど・・・」
「こんなこと話すのいけないかもしれないけど、
 あの子がまだあの部屋に今もいるように感じることがあるんです」
「確かに、俺も同じように感じることがある・・・気のせいか・・・」
「私たちがこんなことを思っているとあの子が成仏できないと言われるけど・・・」
「そうだな。でもそう感じるのだから仕方ないよな」
「そうね。あの子は優しいから、きっと残された家族の気持ちが心配なのかも」
「そうだな。あの子は優しい子だったよな・・・」
などとずっと悲しい表情で悔やんでいる。
その両親の光景を瑠海の霊が心配そうにじっと見ている。
瑠海の霊に関しては遼真の使い魔であるキインがその場で確認している。

 中学校の下校時間に遼真と真美は瑠海の通っていた中学校へと向かう。
帰宅時間のせいか校門から多くの中学生が出て来ている。
遼真はその中から『瑠海の友人』だった『恵理那』を見つけた。
恵理那の家に着く手前で彼女へ声を掛けた。
「!?・・・あなた、どなたですか?」
「僕は桐生遼真と言って、探偵みたいな者です。
 そしてこの彼女は僕のアシスタントです。」
「探偵さん?・・・私に何か用ですか?」
遼真は名刺入れから『桐生探偵事務所』の名刺を渡した。
ここは従兄の桐生翔の事務所だが、
従兄さんの奥さん兼事務員の百合さんとは連絡をして口裏を合わせている。
「こんにちは、私は桐生真美って言います。
 あなたのお友達だった瑠海さんのことで少し教えて欲しいことがあるの。
 少しお時間よろしいですか?」
「桐生さん?・・・瑠海のことですか?」
瑠海の霊は、彼女の隣で悲しそうにじっと見つめている。
「そう、私は瑠海さんとは知り合いなの。
 あの事故を聞いてショックで、やっと最近元気が出たの。
 それであの子のお友達って聞いてるあなたに聞きたくて。
 彼女のことであなたが覚えていることで何か気になることはない?」
「何か気になること?・・・それだったら『ストーカー男』かな?」
「『ストーカー男』?、瑠海さんはそんな思いをしていたの?」
「ええ、ある時、
 急に強い風が吹いてスカートが捲れ上がって下着まで見えたらしいの。
 瑠海は急いで裾を押さえたらしいけど、その男はじっと瑠海を見てて、
 それ以降、何か視線を感じるとその男が居て気持ち悪いと言っていました」
「そう、そんなことが・・・嫌だったでしょうねえ」
「ええ、だから交番へ行ってその男のことを説明して、
 その後、お巡りさんに現場も押さえて貰ってその男、
 瑠海は『変態上田』って言っていましたが、確か『上田武知也』だったかな?
 お巡りさんに『もう近づきません』と誓わせたらしいと瑠海から聞きました」
「ふーん、その男は、上田武知也と言うのね」
「ええ、親はどこかの偉いさんみたいだとは言っていました」
「それ以外に事故を起こす手前に何か聞いたことは無かった?」
「事故を起こす手前だと・・・
 そうだ。確か何か怖い男の人をよく見かける様になったと言っていました」
「怖い男?どんな男って言ってた?」
「モヒカンの金髪で顔や体に入れ墨をして、唇や耳たぶにたくさんピアスしてたって」
「へえ、聞いただけで・・・きっと逃げたくなっちゃうね」
「そう、だから瑠海もそんな時は早足でその場から離れる様にしてたって」
「恵理那さんは、その男を見たことはあるの?」
「一度だけ見たことがあるけど、怖くてちらっとしか見てません」
「もしかしてこの男かな?」
遼真は木村瑠海を歩道橋から突き落とした男「狂次」の顔写真を見せた。
「・・・うっ・・・そう、この男です」
「この男は誰なのですか?」
「それは現在調べている所なんだ。
 もし見かけることがあれば事務所にでも僕の携帯でも・・・」
「私の携帯でも連絡してくれればいいわ。はい、私の名刺。
 でも後を付けたりとか危ない事は絶対にやめてね。約束よ」
「はい、わかりました。
 それはそうと真美さんって、探偵さんのアシスタント?
 あの高校の制服姿ですけど・・・」
「ええあなたの思う通り。私は高校3年生よ。はい、これが学生証よ」
「学生証?・・・ほんとだ、へえあの高校だ・・・
 すごいなあ。いま私も真美さんの高校を目指しているところなんです」
「是非ともお待ちしているわ。良い学校よ」
「そうですよね。勉強は大変だけどすごく雰囲気の良い学校と聞いています」
「そうよ。私は県外から入学したけど、みんな優しい人ばかりよ」
「へえ、もし高校の事で聞きたいことがあれば連絡してい良いですか?」
「ええ、いいわよ。いつでも歓迎します」
「ありがとうございます。
 実は瑠海も真美さんの高校を目指していたんですよ」
「そうなの・・・一緒なら良かったのにね」
「うん、瑠海の分もがんばって真美さんの高校へ入ります」
「がんばってね」