はっちゃんZのブログ小説

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11.「目黒館林研究所」完成

とうとう目黒の新研究所が完成した。

完成記念パーティが簡単に開催されている。

コンパニオンが数名配置されておりゲストへ接客している。

ただ目の配りや姿勢の良さからどうも素人ではない気がしている。

落成パーティには、多くの招待者に混じり、紅柳瑠璃博士も招待されている。

この事件が大々的に報道された時、京一郎は彼女を見つけたらしい。

以前に大学で研究した時、彼女と共同研究をしたことがあった。

彼女の研究者としての資質や手腕を知っている京一郎はすぐに声を掛け、

館林研究所の研究員、と言うより副所長として招聘した。

彼女も京一郎のことは覚えており、ずっと尊敬していたと話している。

彼女を見つめる京一郎さんの目、

彼を見つめる彼女の目、

二人ともその目は尊敬を超えている気もするが喜ばしいことだった。

 

 そして、新しいアンドロイドが歩いている。

「アスカ」と言う名で、芸能人で言うと新垣結衣にそっくりだった。

・・・レイ、アイ、アスカ、コンピュータのリョウコ・・・

この命名の理由は後日聞こうと翔は思った。

アスカさんは、目黒研究所の警備、料理・掃除・洗濯など家事、

翔の探偵事務所内に格納されている道具のメンテナンスが主な業務らしい。

もうじきこの界隈で『謎の館林研究所三姉妹』として有名になりそうだと思った。

 

研究所1階ロビーでパーティを開いているが、本当の姿は一切見せていない。

全体像として、正門から研究棟までは1本の舗装道路で繋がっており、

入り口前にはロータリーと駐車スペースがある。

外側との境となる高い塀と研究棟の間は人工芝が敷かれており、

研究棟の左側には25mプール、右側には茶室風日本家屋を配置している。

不思議と一羽のスズメもカラスも止まっていない。

1階は広いロビーと立派な客間が3室、応接室の1室は一般公開しているが、

2階以上はプライベートエリアということで全てシャッターが下りている。

疑えばきりがないが、全容を教えてもらえるはずもないのでじっと想像してみる。

・珍しく正門付近に大きな犬小屋があり、

 黒のドーベルマンが2匹眠っているがきっと本物ではないはず・・・

・門の犬小屋と反対側に二宮尊徳翁の像が飾られているがただの像でないはず・・・

・監視カメラが多く設置されているがカメラ機能だけではないはず・・・

・ルンバのような清掃ロボが動いているが掃除機能だけでないはず・・・

・鎧の騎士数体がロビーに飾ってあるが単なる飾りではないはず・・・

・地下駐車場への入り口が見えないがきっとどこかに作っているはず・・・

 

何日かして京一郎さんの会話からこの研究所は「リョウコ」のマザーの「ユウコ」が

管理していることが判明している。当然リョウコとは回線でつながっている。

いずれ周辺区画も買い、都内に葉山に次ぐ規模の研究所を作るつもりらしい。

 

これほどの規模の研究所でも、住んでいるのは京一郎さんと紅柳博士二人だけで

警備の薄さが心配だったが杞憂に終わった。

都倉警部からの話では、

完成記念パーティの夜中に壁を越えて二人の泥棒が侵入したが、

壁から芝生に降りた瞬間に空中より光が当てられ、

驚いているうちに金属製の網が投げられ身動きが取れなくなり、

泥棒二人は抱き合ったまま木の枝に吊り下げられてそのまま御用になったと聞いた。

命には優しい人が主人なので泥棒たちも無事で済んでいる。

勿論これは報道されることもなく、

いつの間にか泥棒仲間では『侵入不可能の要塞』と呼ばれるようになったらしい。

(つづく)