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はっちゃんZのブログ

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44.相性

小説1:さざなみにゆられて-山陰編-

二人は早々にマンションを借りて引っ越した。

今度のマンションも家具付きの部屋なので箪笥などは少なくて済んだ。

最上階3LDKで大山が綺麗に見える部屋だった。

4月になり慎一はまたもや多忙な日々が続くが、

家へ帰るのが楽しみだった。

 

仕事を終えて帰ると

「あなた、おかえりなさい。お風呂湧いてますからどうぞ」

「今日はお酒にします?ビールにします?はい、一日お疲れ様でした」

「あなた、今日はこんなことがあったんですよ」

「美波がこんなことをいってきましたよ」

慎一には本当に信じられないほど楽しい日々だった。

 

仕事を残して部屋で残業している時、

ソファでの読書やテレビを見ている時は、そっとお茶を出してくれる。

静香自身も本を読んだりテレビを見てゆったりとしている。

何も話さなくてもお互いがお互いを認識できる気配がある。

それにお互い一人の時間があるので、

長い間独身だった慎一には過ごしやすかった。

 

『夫婦は長い時間、

 一緒にいると自然とタイミングや間が似てくるもので、

 二人でしかわからない時間感覚を持つようになる』

と聞いたことがある。

慎一と静香は初めて一緒に暮らしているにも関わらず

二人には自然な時間が流れている。

 

静香が昼間1人でいるとき、ふと彼とのことを思い出すことがある。

そんな時は頬が熱くなるのがわかった。

今まで夫しか知らない静香、

そして15年も前から経験のない静香にとっては、

若い時は夫にすべてをゆだねていただけの経験しかなかった。

しかし、今の年齢となって

どのように彼に抱かれていいのかがわからなかった。

 

彼の布団に誘われた時はとても勇気がいった。

何も知らないと女だと嫌われたらどうしよう・・・

本当に私のことを気に入ってくれるかな・・・

そんな不安を彼の優しさが溶かしていってくれた。

彼のリードで知らない間にすべてをさらけ出している静香がいた。

 

彼を初めて受け入れた時

やはり最初は少し痛かったが、すぐに彼で一杯になった。

私の痛みを察してくれた彼が優しく待ってくれていたのでうれしかった。

この人を好きになって良かったと心から感じた一瞬だった。

そのうち身体の奥から生まれてくる大きな波にさらわれ、

いつしか目の前が真っ白になり彼に必死でしがみついていた。

やがて身体の奥が彼の熱さで一杯になった。

しばらくするとその大きな波がさざなみとなりおだやかになった。

こんなことは静香にとっては初めての経験だった。

今までこんなに満ち足りたことはなかった。

 

もちろんその夜だけでなく、その後何度も彼に導かれ、

少しずつ敏感になり、

より深い喜びを感じるようになった自分に気づいた。

どんどん変わっていく私を彼は優しく見守ってくれている。

これが『身体の相性』なのだろうと思った。

普段の二人だけの何気ない会話や触れ合いに

『心の相性』の良さを感じた。

心身共に『相性』が合うということがこういうこと、

結婚生活っておだやかでこんなにすばらしいものだったと

初めてわかった静香だった。

二人は5月の連休に勝田神社で

身内だけの神前結婚を行い正式な夫婦となった。

その翌日にお礼のため出雲大社へ参拝した。

(つづく)