月曜朝早く目覚めた。
新聞を読み、朝ご飯を食べて、手作りのネクタイをきゅっと締めて部屋を出た。
妻の『いってらっしゃい』の声を背中に受けての気合いの朝だった。
新たに発足する新銀行『六花銀行本店』は大通公園に面する北側の通りにある。
銀行に着くと早速に会議があって二つの銀行の現場業務の調整が始まった。
二つの組織が一緒になるのは簡単なことではなく当然色々と軋轢も反発もある。
それは当然のことなので見ないふりをして、
ビジネスライクに物事を切り分けながら
課員をまとめてやっていかなければならないことを理解した。
そんな毎日で朝早く出て、遅く帰る日々が続く。
3月末に札幌へ来た時には、山にはまだ白く雪らしきものは見えており、
マンションの周りの道路でさえも日陰には氷が残っていた。
妊婦の静香には危なくて歩くことも怖かった。
しかし、4月中旬になりその氷がなくなると一気に街並みが鮮やかな彩りに変わって行く。
北海道の春は、街中も山もそこもかしこも一気に花が咲き誇る季節だった。
色とりどりの花々が急ぎ足の人の足を止める。
北海道神宮へ安産祈願でお参りした。
おみくじをひくと『大吉』、出産は安産で子、母体とも安心とあった。
二人はほっとして神様へお礼でもう一度参拝した。
神宮内は桜が満開で目に優しかった。
ふと目を移すと桜だけでなく梅も咲いていることに気がついた。
多くの人が花見のために集まって、
そこら中からジンギスカンの香りが漂ってくる。
道産子の花見はジンギスカンで決まりだと感じた二人だった。
春の大通公園は花好きの人達が創作した多くの花壇に彩られている。
暖かい日差しの中で春の小箱の蓋が開けられたように散りばめられている。
静香はお腹の赤ちゃんにもこの風景を見せようとよく散策した。
梅雨らしい梅雨もなくカラリとした風が頬に気持ちいい。
ライラックが綺麗に咲き誇っている5月中旬の大通り公園は
『さっぽろライラックまつり』が開催されている。
多くの市民がゆっくりと散策し可愛い薄紫色の花を見つめている。
大通公園は季節毎になにがしかの催しものがあり、
芝生もあるため子供たちを遊ばせるには最適の場所と感じられた。
(つづく)