はっちゃんZのブログ小説

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126.学園を守れ2

 

2学期の期末試験も終わり、早朝稽古も再開されたようで、体育館や校庭では生徒で溢れている。
翔は空手・柔道・剣道・弓道合気道部などの武道部の稽古の様子を見た。
生徒会長の冴木は「剣道部主将」、副会長の黒木は「弓道部主将」、書記の江藤は「柔道部主将」だった。
翔の赴任時に授業中にも関わらず林に|屯《たむろ》していた奴らは「空手部」だった。
彼らはキチンと稽古には出て来ているようだが、顔つきはいい加減な感じだった。
よく見ると空手部には主将は居なかった。
資料を見ると全国上位の腕前の主将は3年夏休み前にライバル校へ転校していた。
その学校は大学までエレベータ式なので躊躇は無かったようだ。
見学している翔の方を見て
ニヤニヤしながら「あの不良達」が近寄ってくる。
「用務員のおじさん、何か用ですか?
 もしかして空手の練習でもしたいの?
 そんな大きな身体で目立つんだけど」
もう一人がニヤニヤしながら
「おいおい、また前の人みたいに虐めるのか?やめろよ」
「どうだかなあ。
 あいつが勝手に泣いて止めて行ったから知らないよ」
「そう言えば、そうだったな」
と威圧してくる。
どうやら彼らが前の用務員を止めさせた張本人みたいだった。
「いえいえ、若い人はすごいなあと感心して見てるだけです。
 邪魔なら向こうに行きますよ」
「何か俺らを値踏みしてるみたいな目つきが気になったんだよね」
「そうなの?こんなオッサンに?」
その時、顧問の先生が
「お前達。何してる。稽古をしなさい」
「おっ、コーモーン先生来ましたね。
 先生が来なくて暇だったからこの用務員さんと話していました。
 ・・・だよな?
 よ・う・む・い・ん・さん?」
「ええ、そうですよ。
 私が彼らの邪魔をしたみたいで、もう向こうへ行きます」
「さようなら、よ・う・む・い・ん・さん」
彼らは自宅から通っている。
資料によると都内に住むさる大企業のお偉いさんやお金持ちの子息だった。
その様子を生徒会長の冴木はじっと見ていた気配を翔は感じ取っていた。

翔が放課後に校内を見回っていると
珍しい事に生徒会室のドアが開けっぱなしになっている。
何気に中を覗くと誰もいない。
早速中に入るとクモ助4号をポケットから放り投げて壁際の額縁の裏へ待機させた。
その時、廊下側から声が掛けられた。
「あのー、どなたですか?何か生徒会へ御用ですか?」
副会長の黒木が声をかけてきた。
「ああ、用務員の山田です。昨日朝礼でご挨拶させて貰いました。
 いえ、いつもは閉まっているとお聞きしてたのに開いていたもので
 何かあったのでは?と気になって確認のために入りました」
「ああ、そうですか。副会長の黒木です。ありがとうございます。
 あとは私がキチンと閉めさせていただきます」
『誰が鍵を忘れたのかしら』と独り言を言いながら鍵は閉められた。

寮での夕食後、百合から連絡があった。
百合も翔と同じように女子生徒と寮で夕食を一緒に食べたようだ。
やや小ぶりなトランクを持って赴任しており、女性は常に小物入れなどを持っているため監視機器の『テンマル』設置は楽だった。
百合から『今晩はマンションへ帰る』との連絡があった。
たまには変装を解いてシャワーを浴びて素顔でゆっくりとしたいのだろう。
学校外には常に館林の護衛がいるので心配はしていなかった。
スマホ越しだが、素顔の百合の可愛い笑顔で今日の気疲れが吹っ飛んだ。
百合の設置した「テンマル1号」からの情報は常に入って来る。
副会長の黒木は非常に真面目で食後はすぐに部屋で勉強をしている。
たまに風紀委員の女子生徒が部屋を訪れて談笑している。
用務員室と養護教員の寮の部屋の盗聴器はどうやら冴木が盗聴してる事が判明した。
流している音楽と同じ音楽がたまに冴木の部屋へ流れていることで気付いた。
たぶん以前勤めていた養護教員と用務員は学園の何かの秘密を知ったのだろう。
それを知った冴木が二人に文武連合の使い走りを使って危害を加え辞めさせた。

ある日の夜中、冴木の監視のクモ助1号から連絡があった。
どうやら1階の生徒会長の冴木が窓から外出したらしい。
ちょうどチャンスなので冴木の室内へクモ助を侵入させ、
部屋の天井に近い場所に吊ってある剣道大会の表彰状の額縁の裏側へ潜ませた。
そして、翔はバトルスーツに着替えてヘルメットを被り窓から外出した。
林の中を気配を消しながらそっと移動していくと奥から鋭い殺気が流れてくる。
暗い林の中で気合のたびに『キラキラ』と月光を反射する光が流れる。
どうやら居合の一人稽古をしているようだ。
藪の間からそっと覗くと
頬に血の跡のある白い能面を被った男が月明りに浮かんでいる。
体格から見て生徒会長の冴木と思われるが、
仮面から覗く目つきはギラギラとしており、
歯引きしていない日本刀を一心に振っている。
空気を切り裂くような鋭い|刃風《はかぜ》の音が伝わってくる。
腕前は有段者のようで普通は敵はいない強さと思われた。
翔はその身体から漂う狂気のような殺気が気になった。
それ以上に、彼が被る頬に血の跡の付いた能面を遠い昔に見た記憶があった。

最近、事務所の中での話で少し気になった話題があった。
それは事務長の女遊びの話であった。
どうやら事務長へ電話があった時、『あっ、リアちゃん・・・』
と急いで事務所を出て行って、その日は残業もせずにそそくさと帰るそうだ。
翔は事務員が少なくなる時間帯にロッカー裏からクモ助を移動させて
事務長の通勤カバンの裏地に「聞き耳タマゴ」を埋め込ませた。
どうやら今晩は事務長は呼ばれて行くようだ。
事務長がスキップしながら帰った後、翔もバイクで追跡していく。
事務長の場所はGPSでわかっているので楽だった。
お店の女性とは駅前で待ち合わせているようだ。
二人は有名な寿司屋へ入った。
しばらくすると二人の会話が聞こえてくる。
「パパ、今欲しいハンドバッグがあるの」
「少し前、勝ったばかりだろ?」
「もうあれは古いのよ」
「そんなものなのか?」
「同僚のレイナが彼から貰ったって自慢するの。私、悔しくて」
「そうか、わかった。但し来月の初めまで待ってくれ」
「いつも月始めなのね」
「ああ、しょうがく・・・いや、色々とあるんだよ」
「わかったわ。ありがとう。その代わり今晩は目一杯させてあげる」
「それは楽しみ。久しぶりだな。がんばるぞ。」
「ふふ、楽しみにしててね」
二人は遅くまでお寿司をつまんでお酒を飲んで同伴出勤してお店へ入っていく。
どうやら学園の経営資金の門番の事務長が怪しい事を掴んだ。

店が終わってから、二人はホテルへと入っていく。
シャワーもそこそこにして佐々木は女へ挑んでいく。
女のわざとらしい嬌声と佐々木の声が漏れてくる。
終わってしばらくすると
「はあ、良かった。リアちゃんは最高だな。
 特に騎乗位の攻めは下から見てても興奮する。
 この大きなおっぱいの最高の揺れとグリングリンと回る腰、
 それで最後は強烈な締めで一発で終わるね」
「あなたのが私の感じるところへ当たるからいいわ」
「そうか、そうだよな。しかし青臭い子供を好きなオヤジって変だよな」
「ああ、この前言ってた校長先生の趣味ね。何も知らないからいいんじゃない?」
「そうなのか、僕は何も知らない女なんか嫌だけどねえ。先ず立たない」
「この私を夢中にさせるこれがそうなるの?良かった。私が小娘でなくて」
「ましてや子供まで作って、堕ろさせたら懲りると思うけどね」
「へえ、まだ、してるの?」
「そうみたいだね。時々盗み聞きしてる」
「サーさんも良い趣味ね」
「仲間の事は常に弱みを知っておかないとね。
 小娘の癖にそれなりに良い声を出すんだ」
「おーおー、本当にいいお仲間だこと」
「まあ、一蓮托生の関係だけど、強い方で居たいからね」
「だけど、あの件で脅されて上納金が必要なのに大丈夫なの?」
「まあ、以前の痴漢冤罪事件は何とかなったのに、その後の美人局はミスった」
「あなた、本当に好きだものね。これが」
「まあな。嫌いな男はいないさ。まあ学校のお金だからいいんだけどさ。
 貧乏でも優秀で頑張っている生徒への先行投資と言う考え方の学校だし、
 理事長も人の良い男だから我々の理想論に騙されているんだ」
これで校長と事務長の関係と学校資金着服の件は確認できた翔だった。
ただ上納金を渡している組織と女子高生の堕胎の件が気になった。
痴漢冤罪事件や新宿での堕胎と言えば、あの宿敵「倉持組」だが・・・