はっちゃんZのブログ小説

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19.百合との出会い 3

百合がぐったりしたミーアを抱き上げた時、その周りを不審な集団に囲まれた。

翔が一瞬、百合の盾になって手足を広げた瞬間、

足元に影のように早いタックルが仕掛けられ、

ボディースラムの態勢にされ、

ジャンプして翔は背中から地面に叩き付けられた。

とっさに頭は腕で守ったが、息が詰まり喉の奥に血の味がしている。

その瞬間、周りを囲まれて蹴られた。

顔やその他の急所を守るべく守りの態勢に全力を挙げた。

やがて少しずつ呼吸が出来てきた。

痛みはあるが動く部分を確認した。

全身の筋肉や骨に異常部分はないと確認できた。

 

「俺はビーストってんだ。おめえが女にいい恰好している奴だな。

 昨日、偶然ダチがおめえを見つけたから待ってたんだよ。

 変な技を使うと聞いたが、使う間もなくKOか?ははははは」

「さすが、プロレスラーを目指しただけはありますねえ。

 あんな強烈なヤツを喰らったら死んでるかもしれませんね」

「さあな、俺はそろそろ消えるとするか」

「ありがとうございます」

「いつでも行ってきな。どんな奴でもKOだぜ。ははは」

 

翔はフラフラしながら立ち上がった。

全身が悲鳴を上げているがそんなことを気にする間はない。

百合に何かあれば大変だった。

桐生一族の呼吸法を行った。

全身の痛みを抑え、同時に全身に力を注ぎこむ。

桐生一族鬼派次期党首候補として敗北は許されない。

この技を喰らったのは己の慢心が招いたことと反省した。

「ほう、あの技を喰らっても立ってくるか

 俺の体重もかかってるから相撲取りでもKOしている技なんだが」

敵は体重がありタックルなどを使用することから

翔はとっさの動きに対応できる猫足立ちの構えで対峙した。

ビーストはニヤニヤ笑いながら近づいてくる。

顔にパンチの一つや二つを喰らっても無視している。

ローキックを繰り出したが上手くさばいている。

相当に場馴れしている男のようで当て技では筋肉の鎧に弾かれて効かない。

そうとなれば抜き手で筋肉の鎧を破壊するしかない。

男がガバッと掴みにかかってきた勢いに乗せて懐へ入り抜き手を鳩尾に入れた。

指全てが埋まるくらいに抜き手が発達した腹筋の間に入っている。

動きの止まった男の顎に、身体を沈ませて頭に拳を乗せて全身のバネで叩き込む。

顎の上がった喉元に両手でモンゴリアンチョップを入れて昏睡させた。

本来はチョップではなく、喉の急所に抜き手を入れて殺す技だが、

殺す訳にはいかなかったので仕方なしに生かした。

仲間たちはビーストと呼ばれた男が一瞬で倒されたので後ずさりしている。

翔は彼らに言った。

「その男を連れて行け。今後この目黒近辺で見かけたら殺す。わかったな」

「はい、わかりました。もう目黒には一切来ません」

男達はビーストと呼ばれた大男を抱えて逃げて行った。

 

百合が驚いて立ちすくんでいる。

翔はさすがに疲れてベンチに座り込んだ。

「館林さん。もう大丈夫ですよ。

 ネコちゃんも大丈夫ですか?」

「は、はい。桐生さんは大丈夫ですか?」

「ええ。大丈夫です。今回は逃げられなかったから戦うしかなかったですねえ」

「こんなにひどい顔になって私のためにごめんなさい」

「いえいえ、あなただけでなく子猫ちゃんのためでもあるからね」

「じゃあ、急いで部屋へ入ってください。そのネコちゃんは僕が育てますよ」

「今日は部屋に来てください。ちゃんと手当しないと・・・」

「これくらいは大丈夫ですから気にしないでください」

「そんなこと言わずお願いですから手当くらいさせてください。

 そうじゃないと私、あなたのことが心配で、私のためを思うなら手当させて下さい」

「うーん、今回だけだよ。あなたに危険な思いをさせたくないので」

(つづく)