はっちゃんZのブログ小説

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小説4:送霊師奇譚

10.捜査1(友人恵理那)(第7章:私の中の誰か)

遼真は、瑠海の和御魂と荒御魂から念写された多くの写真を見ながら捜査に入った。瑠海の事件は、転落現場付近に監視カメラも無く普段人通りも少ない場所で目撃証言も瑠海を見つけたサラリーマンだけだったため、警察では転落事故として処理されているらしい…

9.霊査3(木村瑠海の悲しみ3)(第7章:私の中の誰か)

粉雪の舞う冬のある日、主治医の先生から父母へ「あの、実はあるご提案があるのですが・・・」「!!!先生、何ですか?もしかして瑠海が助かるのですか?」「いえ、残念ながら、もうそれはありません」「・・・???」「実は、お嬢さんがこのカードを持っ…

8.霊査2(木村瑠海の悲しみ2)(第7章:私の中の誰か)

その男は、古い大きな倉庫の中に居た。倉庫の大きな扉には「GDコーポレーション」と会社名が書かれている。その中は広く奥には部屋や机や椅子があって、机や椅子の周りには釘の打ち込まれた角材やバットなど危ない物が転がっている。一目見て柄の悪そうな恰…

7.霊査1(木村瑠海の悲しみ1)(第7章:私の中の誰か)

幼い舞華を苦しめていた荒御魂を宿し黒く変色した人形《ひとがた》”は、現在、祈禱所内でも慎重に何重もの結界を張った場所へ安置している。遼真と真美は帰宅すると慌ただしく祈祷所へ入った。今回の荒御魂は恨みなどの負の感情のみで出来ているため、その荒…

6.舞華の笑顔(第7章:私の中の誰か)

遼真はすぐさま浴室へ入り水垢離をして身を清め、祈禱所では智朗さんと一緒に” 荒御魂分離修復術”の準備を進めていく。やがて遼真から真美へテレパシーで『真美、こっちは準備できたよ』と伝えられた。真美の部屋の香炉には、今朝から心を沈静させる成分が入…

5.臓器の記憶(第7章:私の中の誰か)

ここで移植された臓器が本当に記憶を保持しているかどうかであるが、これは都市伝説ではなく実際に研究もされているし、世界でも数そのものは非常に少ないものの実際に報告されている現象である。 臓器移植と記憶に関しての興味深い論文と事象に関して、イン…

4.舞華の悪夢(第7章:私の中の誰か)

夜が徐々に更けて行き、真奈美のお友達の真美が泊まることで大喜びで色々と遊んだ舞華の瞼が重くなってきた。でも楽しい時間を少しでも過ごしたい舞華は頭を振ってでも起きている。しかしその努力も空しく、とうとううつらうつらとし始めた。真奈美がそっと…

3.真美の友人の悩み(第7章:私の中の誰か)

都内でも有名な私立女子高校へ通う真美には多くの親しい友人がいる。その中の一人に医師の父を持つ工藤真奈美がいた。彼女には難病で幼い頃から入院している末の妹がいる。妹の名前は、|舞華《まいか》。年齢は7歳。|舞華《まいか》は、難病の”特発性心筋症”…

2.多摩湖の桜吹雪(第7章:私の中の誰か)

前回と同じように多摩湖関連の神社へ参拝し、多摩湖に着くと、以前の様にボートへ乗って二人で湖の真ん中へと進む。やがて二人の乗ったボートの周りに霧が立ち込め始める。そっと水面へ日本酒を注ぎ込む。「おお、遼真に真美、久しぶりだな。うーん、これは…

1.遼真の背中(第7章:私の中の誰か)

迷い里事件で受けた真美の額の傷も癒え、よく見ないとわからない様な小さな痕だけになった。毎日徐々に陽射しが暖かくなり、神社の木々にも若芽が芽吹き、街の花壇の中にも小さな花々が顔を出し、道路沿いの桜も芽吹き始めている。そんな春の日々、遼真はこ…

5.遼真覚醒、そして母は(第6章:母と共に)

母の肩から流れる血が遼真の額に滴り落ちた時、遼真の瞳が明るく大きく金色に輝き始めた。「明王様、何卒母様を守るため私に力をお授けください」と叫んだ。途端に魔物の首に紐が絡んだ様な跡が入り始めた。遼真の念力だった。『グッ、グワッ』魔物は首に手…

4.襲撃(第6章:母と共に)

やがて社殿正面の深い白い霧の中から『ペチャ、ペチャ』濡れたヒレで歩く音が聞こえてくる。その数は1匹や2匹では無かった。そしてその音が消えた。八重は急いで多くの霊糸を周りの空間へ張った。八重の心臓の鼓動が早くなった。遼真の見ている風景が脳裏へ…

3.深き淵に潜むモノ(第6章:母と共に)

それは川の深い淵に潜んでいた。それは己の解放された森への何者かの接近が感知できた。すぐに水面を使って、神社の手水舎から森にある神社の境内を見つめた。そこにいたのは、己に危害を為す可能性のある力を持つ母子であった。それはこの母子の顔を覚えた…

2.怪事の始まり(第6章:母と共に)

最近日本中で地震が増えて来ている。以前の阪神淡路大震災や東日本大震災ほどではないが、毎日の様に日本のどこかでグラグラと揺れており、地震についてテレビで報道しない日は少なかった。今まで少なかった北海道西部や青森県西部、京都付近もたびたび揺れ…

1.遼真と母(第6章:母と共に)

桐生遼真は、2002年春、東京都目黒区にある神社の長男として生まれた。父の名前は、桐生龍司《りゅうじ》、母の名前は八重《やえ》。父は狐派次期頭首候補であり、父母ともに多くの特殊能力を持っていた。 遼真は生まれた時から身体も大きく母八重の母乳をた…

9.遼真の後悔(第5章:真美を救え)

桐生一族京丹波家狐派頭領の令一は、石像とその根元の悪心坊が埋めた木片を共に京丹波家の方へ持って帰った。萩原マリコは、事件に関する記憶を消して部屋まで送って行った。マリコの部屋の中は、既に子供のいた痕跡は無かった。その後、風の噂で萩原マリコ…

8.すみれ、決別の涙、そして(第5章:真美を救え)

自縛陣に横たわるマリコの側に、すみれの霊魂が心配そうに立っている。母親の元に行きたくとも自縛陣の中へは入れなかった。じっと母親の姿を見ている。「ママ、どうしたの?」「・・・?」「わたしは、すみれよ、ママ、ママ・・・」すみれはすでに気付いて…

7.十字路の悪霊(埋められた呪詛)(第5章:真美を救え)

猿野花(さのか)の霊へ「4人の人間の命と引き換えにお前の子供の命は蘇る」と伝えた法師の正体は、夢乃さんの術で明らかになった。その男は、”悪心(おしん)坊”と名乗る鞍馬山を訪れた修験者の一人だった。”悪心》坊”という男は、金持ちと見れば何やかやと…

6.怨霊、猿野花(さのか)の物語(第5章:真美を救え)

白猿がさらってきた女性マリコは、高い木の枝に不安そうに座っている女の怨霊が憑依している女性マリコへ頭領の令一は、“遠当て”を使った。『ハッ』マリコの身体が強くはねて、胸に子猿の像を抱いたまま突然意識を無くして落下してきた。一族の者が数名下で…

5.白猿(びゃくえん)との戦い(第5章:真美を救え)

『きゃあ、あっちに行って。こっちに来ないで。いやー』突然、真美から悲鳴が送られてきた。『真美、どうした?』『赤い涙を流した怖いおばちゃんが私に入ろうとしてるの』『えっ?真美に?』『いやー・・・』『真美、真美、どうした。返事しろ』それ以降、…

4.遼真、真美を発見(第5章:真美を救え)

遼真は、確実に強くなる真美の痕跡を探りながら鞍馬山の麓へ着いた。その痕跡は登山道から離れ”獣道”へと続いている。頭から尻まで白い鬣《たてがみ》を持った妖怪猿はこのコースを移動したようだ。だが、ここまでくるともう”獣道”を歩く必要もなく、今居る…

3.萩原マリコの物語(第5章:真美を救え)

マリコは、滋賀県と福井県の境に近い小さな貧しい村で生まれた。家の近くの小さな林の中で、一人で遊んでいる時、誰か知らない優しそうなおじさんにお菓子を貰ってそのあとに『怖くないからね』と言われて下着を降ろされ、局部をずっと優しく撫でられて快感…

2.遼真、出発する。(第5章:真美を救え)

遼真は一度家に戻り書置きをして、リュックサックに携帯電話、守り札、地図、磁石、飲み物、食べ物や二人分の雨具を詰め、愛車である自転車”龍星《りゅうせい》号”といつも使っている木刀の愛剣”龍尾《りゅうび》”と共に家を出た。先ずは真美がいつも遊んで…

1.事件発生(第5章:真美を救え)

ある事件が新聞の第一面を飾った。「謎、真夜中の十字路で少女死亡」事件の詳細は以下、名前:萩原すみれ年齢:4歳場所:京都市内猿塚公園横の十字路死亡時間:午前0時から5時の間発見時状況:早朝5時、十字路の真ん中に路上に横たわっており、 パジャマ…

11.迷い里、道切村での戦い3(第4章:迷い里からの誘い)

その時、「自縛印」いつもの真美の声が響き渡った。妖怪の身体を巻き付けた遼真の身体を中心に白い逆三角形が浮かび上がった。「真美、大丈夫なのか?無理はするな」「いえ、さきほどは私の未熟な技のため、ご迷惑をお掛けました。 遼真様、真美はもう大丈夫…

10.迷い里、道切村での戦い2(第4章:迷い里からの誘い)

遼真は一人で戦う腹を決めた。大妖怪『囁き女』の力は強い。今までの様な戦い方では勝てないと思った。 一瞬でも『囁き女』の注意を逸らす必要があった。遼真はバトルヘルメットからバトルカーへミニミサイル発射を指示した。このミニミサイルは、戦車程度な…

9.迷い里、道切村での戦い1(第4章:迷い里からの誘い)

今までこの世で彷徨《さまよ》う魂や悪霊をあの世や神界へ送ってきた遼真と真美だが、今回は魂の所在が見つからないため、その技、送霊術を使えなかった。ただ黒い魔物がいつ出てくるかわからないので先ずは、いつもの様に真美が人骨の山全体を『銀環力(自…

8.迷い里、道切村へ侵入(第4章:迷い里からの誘い)

道切《みちきり》村の情報をある程度集めた遼真達は、次の満月の夜に合わせて準備を整えた。いよいよ1月18日、今夜は満月『ウルフムーン』と言われている。ウルフムーンとは地球から最も遠く見た目も小さい満月のことである。月の力としては一番弱い時期では…

7.霊査5 天山 聡氏の場合3(第4章:迷い里からの誘い)

新妻のエリとの夢のような日々がしばらく続いた。最初のうちは痛がっていたエリも、毎日の様に身体を合わせたこともありだんだんと感じるようになり、身体も気のせいかふっくらとしてきている。身体を合わせた後は、エリの瞳にはなぜか涙が溢れている。 月の…

6.霊査4 天山 聡氏の場合2(第4章:迷い里からの誘い)

ある満月の夜、天山が長距離の仕事から都内へ帰って来た時、突然真っ白い霧に包まれた。目の前に古いトンネルが現れて、スピードを落としてその中へ入って行く。そこから出ると灯りもない古い村が現れた。天山は村の突き当りまで行き、トラックから降りた。…