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はっちゃんZのブログ

スマホの方は『PC版』『横』の方が読みやすいです。作品のもくじの章の青文字をクリックすればそこへ飛びます。

28.慎一の約束、静香の願い

美波ちゃんが二階へ上がってしばらくして、静香さんが風呂から上がってきた。 いつのまにか美波ちゃんの部屋からの音も消えている。 「あれっ?美波がいたのだと思いましたが」 「うん、少し話しておやすみなさいって上がっていったよ」 「そう、最近相当に…

22.幼い兄妹(きょうだい)の依頼 2

理恵子がシャワーを終えてスキンケアをしている。 しばらくすると電話が鳴った。 「はい、わかりました。もうすぐ伺います」 鏡台の椅子に座りながら子供の写真を見て泣いている。 おもむろに鏡台の引き出しから薬剤を出して含んだ。 そして部屋を出ていった…

27.美波のがまん

夕食が終わり二人でゆっくりとお茶を飲んでいる。 静香さんが仏間に入っていき戻ってくる。 「慎一さん、美波が来る前だから二人の時の名前で呼びます。 京都に行ってもがんばって下さいね。 京都もこちら同様に苦労するところがあると聞きますので 無理をし…

26.いつもの音

静香さんが朝早くから来て、まだ残る荷物のまとめと部屋の掃除をしている。 30日昼前に引越業者が来て昼過ぎには搬出し終わった。 部屋は引っ越してくる前に戻って行く。 自分の思いは元には戻っていない。 ほんの1年半と短かった期間だが、 今までの転勤…

25.それぞれの思い

家に帰り1人になると静香の心は千々に乱れた。 彼の前では気が動転してボーとしてしまった。 彼は転勤族と覚悟はしていたものの実際に経験すると余りにも唐突過ぎた。 あと半年、あと1年あればと思う心もあるが きっといつであっても唐突に感じるものなのだ…

21.幼い兄妹(きょうだい)の依頼 1

ある夜、10日ぶりに百合の横で眠る翔は夢を見た。 幼い少年と少女が手を取り合って話しかけてくる。 「ぼくたちのお母さんが苦しい思いをしているから助けて欲しいんだ。 お母さんは『大望楼』という料理屋さんで働いているんだ」 「お母さんが泣いているか…

24.突然の辞令

お盆休みの前に京都支店の同期から 『突然家業を継ぐことになった』との連絡があった。 親父さんがこのお盆前に突然脳卒中で亡くなり、銀行を辞めるしかなかったそうだ。 会社の都合で非常に変則だが、8月末をもって銀行を辞職することとなった。 そいつは…

20.百合との出会い 4

百合の部屋は、4LDKで1人の部屋には広すぎるらしいが、 娘の身を案じたご両親が是非にと購入したらしい。 ダイニングで座っていると百合が薬箱を持ってきて手際よく手当をしていく。 良く見ると泣いている・・・ ふと本人もそれに気がついて涙を手で拭…

23.浴衣2

「少し下で待っていてください。私も着替えますから」 しばらくして二階から着替えた静香さんが下りてきた。 長い髪はそのまま下ろされ、 「白地の網代模様の浴衣」に「辛子色の麻の葉模様の帯」が締められていた。 「いい柄だったので私も気に入ってお揃い…

19.百合との出会い 3

百合がぐったりしたミーアを抱き上げた時、その周りを不審な集団に囲まれた。 翔が一瞬、百合の盾になって手足を広げた瞬間、 足元に影のように早いタックルが仕掛けられ、 ボディースラムの態勢にされ、 ジャンプして翔は背中から地面に叩き付けられた。 と…

22.浴衣1

今年度は昨年度の地道な努力が実り、順調に新規開拓ができている。 数字も前年同月比で130%以上の進捗で課員も張り切って仕事している。 赴任して来た当初の課員の雰囲気は『達成できなくて当然との意識』が 透けて見えるほどで、やる気にさせるのが大変…

18.百合との出会い2

大学で翔は『格闘技研究同好会』に所属していた。 この同好会は戦うわけではないが、闘いの歴史や暗器などの研究をしている同好会で、会員は何某かの格闘技の経験を持っている。 翔自身は『空手』の経験があるという事で入っている。 そんなところへ何と新入…

21.彼との距離

慎一が帰ったあと静香はゆっくりと湯船へつかり彼の笑顔を思い浮かべた。 彼の家庭がうまくいきそうで嬉しかった。 もちろん幼い頃からの辛い記憶を変えることは大変なこととわかっている。 しかし彼本来の性格は、そんな辛い記憶で変わるものではないはずと…

17.百合との出会い1

桜舞い散る中、新入生がキャンパスで光り輝く未来を夢見て歩いている。 翔は、政治経済学専攻の3年生だが将来をまだ見出すことも出来ず、 ただただ鬱屈した日々を送っていた。 大学の帰り道にガラの悪そうな数人が一人の女性を囲んでからかっている。 その…

20.母の再婚

28日朝に出発し昼過ぎには着いていた。 家で甥っ子と遊んだ。やがて甥っ子も疲れて昼寝を始めた。 そこから母親と妹の3人で話し合いが始まった。 父は明日に来るらしい。 一番反対すると思っていた慎一が再婚を認める発言をすると 母と妹は意外な顔をして驚…

16.ストーカー事件を解決せよ!4

ボスの「チョウ」と用心棒らしき男1人が到着したとの連絡があった。 2階の幹部用の部屋へ入った。 都倉警備から地上・地下道全てで配備完了の連絡が入った。 突然、エレベータが3階に上がってきた。 翔は、監視の男と反対側のエレベータの扉の横に身体を…

19.二人で出雲へ

5月連休前に妹から電話が入った。 いつに帰ってくるのか教えて欲しいらしい。 理由を聞くと父親が家に顔を出すからだと言う。 それを聞くと一瞬帰りたくなくなったが、母親のことを考えて帰ることとした。 26日は静香さんと松江・出雲の方を案内してもらう予…

15.ストーカー事件を解決せよ!3

都倉警部から前回の事件の被疑者の中国人リーダーの男が、 拘留中の拘置所の中で死んだらしいとの連絡が入った。 耳の中に細い毒針が刺さっていたらしい。 最近採用になった職員が1人だけいなくなっているので きっとそいつの仕業だろうとの話だった。 警察…

18.桜街道

米子市が桜色に染まるある土曜の朝、 湊山公園で桜を穏やかな気持ちで眺めている。 中海の水面は桜の花びらに染められており、 水鳥公園の鳥達も花見をしているのか、ときおり水鳥の声らしきものが響き渡る。 旧賀茂川沿いの白壁土蔵を背景とした桜並木も見…

14.ストーカー事件を解決せよ!2

資料を見ていた時、一瞬スマホの電話が鳴って切れた。 相手はクライアントの安達玲奈さんだった。 すぐにかけ直したが一切出なかった。 嫌な予感がしたので追跡装置をトレースすると、 目立つ方の追跡装置はあちこちへ移動している。 これは敵が気づいて混乱…

17.移り変わる記憶

もう季節は春へ一歩一歩近づいている。 米子の冬は雪が多い。駐車場の雪かきが必要なこともあった。 『さざなみ』からの帰路には、 街頭に照らされたオレンジ色の雪が舞う様をいつも見上げていた。 その様が見えなくなって久しいと感じ始めた今日この頃。 米…

13.ストーカー事件を解決せよ! 1

ある日、クライアントから立て続けに新しい依頼があった。 【依頼内容1】 依頼人氏名:安達 玲奈様、30歳、 依頼人状況:一人暮らし。化粧品会社業務課勤務。 最近年下の彼(高村 正志、27歳)と別れる。 彼が犯人かもしれないが現在は行方不明。 今の部…

12.臓器売買組織を壊滅せよ

ある日、事務所を東南アジア系らしき女性が訪れた。 【依頼内容】 依頼人氏名:モニカ サントス様。25歳。 依頼人状況:新宿内キャバクラ穣 種類:恋人(ジョン ガルシア 30歳)を捜索。 経過:来日後今までずっと土木作業員をしていたが、 2週間前に空…

16.初詣

マンションに戻るとポストに美波ちゃんから年賀状が来ていた。 『新年あけましておめでとうございます。 美波は今年こそテニスで県大会上位を目指します。 今年も昨年同様に『さざなみ』をよろしくお願い申し上げます。』 PS.旧年中は大変お世話になりあり…

15.帰省、遠い記憶

さざなみで蟹三昧を満喫した翌日は、 早々に掃除をして神戸の実家への帰路についた。 ルートとしては何通りかあるが、慎一は以下ルートを選んだ。 米子市から米子道を通り、中国自動車道に突き当たる落合JCTを左折し、 岡山県を通過し兵庫県に入り、福崎ICで…

11.「目黒館林研究所」完成

とうとう目黒の新研究所が完成した。 完成記念パーティが簡単に開催されている。 コンパニオンが数名配置されておりゲストへ接客している。 ただ目の配りや姿勢の良さからどうも素人ではない気がしている。 落成パーティには、多くの招待者に混じり、紅柳瑠…

14.師走、三人で

年末まで過ぎ去る時間は早かった。 ふと気が付けばあれほど街を秋色に染めていた街路樹はその葉を全て落とした。 11月初めの連休こそ、ゆったりと過ごしたが、それ以降は仕事一色だった。 たまに土日のどちらかに遊びに来る美波ちゃんとの会話だけが疲れを癒…

10.テロ教団から都民を救え!3

翔は紅柳博士に寝ているふりをしてもらいながら布団の中で打ち合わせた。 瑠璃も『何とか外部と連絡は取れないか』と思っていた矢先のことなので、 翔のことを色々と確認しながら、今までのことを語った。 この部屋へ幽閉される1ヶ月前に遡る。 『細胞オート…

9.テロ教団から都民を救え!2

翌朝、色々と準備をしていると昼前に新しいクライアントが訪れた。 【依頼内容】 依頼人氏名:高田洋平様。37歳。 依頼人状況:会社員。 種類:家族への宗教勧誘の被害。 経過:通学路歩行中の児童の列へ車をつっこまれて子供を失くした一家の父親。 当日…

8.テロ教団から都民を救え!1

『ピンポーン』 二人はまたもや飛び上がって、ぴったりとくっついた頬も離れた。 今度は依頼人のようだ。 「は、はい、少々お待ちください。 今、外出から帰ったものでこのような格好で失礼します」 奥の部屋で百合がビジネススーツに着替えている。 百合が…

13.とまどい

『私、弱くなったのかもしれない』 ふと脳裏にその言葉が浮かんできた。 静香はステーキハウス精山から帰宅後、お風呂へ入り、 パジャマを着てゆっくりとお茶を飲んでいる。 左手のバンドエイドを張り替えながらじっと今日のことを考えていた。 砂丘で自然と…

12.帰途の二人

せっかくここまで来たのだからと鳥取砂丘でお弁当を食べることとした。 砂丘にはラクダが歩いており、まるでアラビア映画のような光景が広がっていた。 ただ異なるのは、砂丘の向こうは砂の海ではなく蒼い日本海がだったことだった。 砂丘入口から海岸まで行…

7.葉山館林邸2

翌朝、翔は朝日が昇るにはまだ間がある時間に目覚めた。 屋敷内のどこかで無言の裂帛の気合いらしきものが発されたためだ。 この家で事件が起こるはずがないのできっとあの爺さんが発したものだと思い、 トレーニングウェアに着替えて部屋を出た。 屋敷を出…

11.美波、秋の県大会新人選へ出場

9月、10月は上半期末と下半期始めのため慌しい日々が続いている。 土日も家に書類を持って帰る日々が続き、なかなかゆっくりとできる日がない。 そんな中でも『忙中、閑あり』、その金曜日にやっとゆっくりとできる日ができた。 それでも夜8時まではデスクワ…

10.がいな大花火大会

境港市から後藤家に戻るコースを、弓ヶ浜経由に変えて、弓ヶ浜公園に降りた。 弓ヶ浜公園は今後、夢みなと博覧会から大型遊具を譲り受け、 『弓ヶ浜わくわくランド』を開園予定だと聞いたので米子市民は楽しみにしている。 後藤家へ到着し慎一は食材の発泡ス…

6.葉山館林邸1

翔が超能力を発現した後に再度検査して比較データをとり今日は終わった。 研究所の地下道のエスカレータに乗り、葉山館林邸へ運ばれていく。 翔はと言えば、1年ぶりに顔を出すので緊張している。 ここ館林家の爺さんや婆さんは、 桐生家実家の爺さんや婆さ…

9.がいな祭りと境港

夏の山陰地方は涼しいと、関西や四国地方を勤務してきた慎一は感じている。 肌にあたる日差しの強さとか最高気温を比較してわかったことだった。 米子城跡にある湊山公園を散歩している時など木陰に入ると吹き渡る風は涼しかった。 8月始めの土日二日間、こ…

5.いつ出るの?超能力!

「ではさっそく、翔君、跳んでくれたまえ」 「???跳ぶ?」 「いや、だから、もう一度跳んでくれたまえ」 「???」 「もう一度、テレポーテーションをしてくれたまえと言っているんだ」 「もう一度と言われても・・・」 「楽しみにしているよ」 翔は、『…

8.美波の秘密

ある夜、美波は土曜日のプールへの準備をしていた。 母には友達と皆生温泉プールで泳いでくると言っている。 「あなたがプールにねえ。どういう風の吹き回しかしら。水はもう大丈夫なの?」 と不思議そうに美波を見ている。 本当は、皆生プールへ日下さんと…

7.追憶2

柔らかい桜色の風が神戸の街を包んだある日、 突然、 夢は覚め、 時は止まり、 世界がモノクロームに変わった。 「静ちゃん。落ち着いて聞いてね」 「はい、何があったのですか?」 「勇二君が・・・」と言って事務所の皆が泣き始めた。 社長が涙を流しなが…

6.追憶1

静香はタクシーに乗ってしばらく経って目を覚ました。 美波が静香の背中をさすりながら心配そうに見つめている。 「はっ、お母さん、眠ってた?」 「うん、私、びっくりしたよ。今日みたいなお母さん、初めて」 「ごめんなさい。嫌なことがあって少し飲み過…

4.『葉山館林研究所』到着

翌日、朝8時にマンションの玄関に京一郎からの車が停められた。 「百合お嬢様、そして桐生 翔様、おはようございます」 「おはよう。アイさん。わざわざありがとうございます」 「いえ、百合お嬢様、お安い御用でございます」 「だいぶ、道が混んでいたのじ…

3.京(凶)一郎、見参!

百合が秘書兼事務員となって、『新宿探偵事務所桐生』は大きく変わった。 というより百合カラーに変えられた。 事務所の名前も『Kiryu detective agency』と変わり、入口もカラフルなドアとなり、 可愛いアニメ調のホームページも開設され、女性も気安く相談…

5.面影

6月中旬を目標としていた大きな融資案件がやっと決まり、融資課開設後、 初めて月目標が達成する目処が着いた。 9月までは徐々に決まりつつある案件でスムーズだった。 6月21日は誕生日で、久しぶりに『さざなみ』でゆっくりとできそうだった。 仕事を早く仕…

2.翔、帰還?!

製薬会社の研究室に勤める百合は、今朝から胸騒ぎに襲われ、 不安が去らなかったため早々に実験を中止し早退した。 シャワーを浴びても気分がすっきりしなかった。 化粧水を塗りながらスキンケアをしている自分の顔が写る。 いつもはレイヤーカットのストレ…

1.絶体絶命のはずなのに?

今、『新宿探偵事務所所長桐生 翔』は、 尾行に失敗し新宿虎志会所属のヤクザに捕まり、 千葉県の寂れた小さな漁港の波止に連れて来られている。 口にはガムテープ、後手に括られ、椅子に座らされ、 両足をセメントの入ったバケツに入れられている。 ヤクザ…

4.静香のまなざし、美波のまなざし

静香は最近一人のお客さんが気になっていることに気が付いた。 それは5月連休直前に来店した『日下さん』だった。 関西弁で静香の料理を美味しい美味しいとたくさん食べてくれる人。 連休明けは仕事が忙しいみたいで週に2、3度は来るが、 まだ仕事が残って…

3.秀峰大山へ

「さざなみ」で気持ち良く飲んで眠った翌日、自然に目覚めたのは正午手前だった。 朝昼食兼用でトーストとコーヒーとサラダをニュースを見ながら食べた。 ふとベランダを見ると、『秀峰大山』が花曇りを背景に際立って見えた。 掃除しながらここ一週間の溜ま…

2.「さざなみ」初来店

明日から久しぶりの大型連休で十連休となった。4月は年度初めであり、 高い目標で動いたが融資部としてもなかなか成績は上がらなかった。 4月27日は恋人や家族との旅行を控えた人が多いようで口々に「お疲れ様でした」と そそくさと退社していく。 慎一は特…

さざなみにゆられて-山陰編ー 1.赴任

「次は米子、米子」 慎一は軽く背伸びをして手元にある人事異動通知書を見た。 人事異動通知書 高松支店融資部 日下 慎一 殿 関西中央銀行本店 人事部長 清水 英雄 貴殿を平成8年4月1日付で山陰支店への異動を命ずる。 以上 岡山駅を11時過ぎに発車した特急…