はっちゃんZのブログ小説

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69.友人と内定のお祝い

父の勤務する六花銀行への内定が無事決まった美波は、急いで彼に電話を入れた。
彼は非常に喜んでくれて、『ぜひともお祝いをしたい』と言ってくれている。
ただ彼はこの4月から新しい部署への異動となり、
初めて一緒になった同僚や新しい得意先ばかりで毎日が忙しく、
土日は土日で実家の果物などの収穫や加工の手伝いもあって、
なかなか美波と会えない日々が続いている。
まあ銀行に限らず会社は、年度始めと終わりに忙しいのは当然で仕方なかった。
そんな時、
美波の友人の芳賀さんも札幌市内にある大通り公園に面する場所に
支店のある大手製薬会社の業務系社員として内定が決まった。
他の友人たちも順調に内定が決まってきている。
二人の内定のお祝いとして、
芳賀さんと一緒に札幌市内へ遊びに行こうということになった。

小樽駅を10時頃に出て、札幌駅で降りて、天気がいいので大通り駅まで歩いた。
本州ではもう梅雨に入って、温度も湿気の高い毎日が続いているようだ。
札幌でも少しの期間は“蝦夷梅雨”というものはあるが、たとえ雨が降っても
美波も家族も好む北海道の特徴の一つである、
“サラリとした肌合いの気候”で過ごしやすかった。
美波の生まれた故郷の鳥取県米子市は、山陰地方で中国山地の影響もあり、
太平洋から北上してくる梅雨前線の雨が、中国山地に南側の瀬戸内海側へ落ちるため、
四国地方や瀬戸内海地方の山陽地方と違い、フェーン現象の様になり、
山陰地方は梅雨の時期に関しては雨が少なく晴れている日が多い。
また、夏の温度も四国地方や瀬戸内海地方の山陽地方と比べ最高温度も1-2度低い。
逆に梅雨以外の日は、年間を通じて湿気が多く、各家庭に除湿器は欠かせない気候だった。
美波は懐かし気に高校生まで過ごした山陰地方に思いを馳せながら、
大通り公園で過ごす多くの人々が、柔らかく明るい日差しの中で
綺麗に整備された咲き誇る花壇やテレビ塔をバックに写真を撮ったり、
生キャラメルやソフトクリームなどを食べているのを見ていた。
二人はテレビ塔を昇って大通り公園を高い場所から見て、
塔のアンテナショップで小物を見て、弟妹のおもちゃを買いこんだ。
二人が喜ぶ、手のひらに乗るサイズの様々な色の動物のぬいぐるみだった。

お昼は少し豪勢にと思い、大通り駅から近い店で値段的にもお手頃な
ガッツリ系なのに美容にも良い『松尾ジンギスカン札幌大通南一条店』にした。
この店は中央区南1条西4丁目16-1南舘ビル1階にあって、昼間から多くの客で賑わっている。
二人は『特上ラムランチセット』を頼んだ。
すぐ卓へ二人前の特上ラムジンギスカン、野菜盛合せ、ライス、味噌汁が運ばれてくる。

このジンギスカン料理に関して、
農林水産省ホームページの『うちの郷土料理』から抜粋すると
歴史・由来・関連行事としては、
大正時代、第一次世界大戦の勃発により、羊毛の輸入が困難になると、国策として、綿羊飼育が奨励された。当時、北海道でも綿羊飼育が盛んとなり、このころから羊肉が食べられるようになったといわれている。第二次世界大戦後、衣料資源の不足によって、日本全国各地で羊毛需要がさらに高まるが、次第に輸入羊毛や化学繊維が国産羊毛に普及すると、北海道内では綿洋飼育から羊肉用の飼育へと変わっていった。「ジンギスカン」は当時の羊肉消費拡大のために根づいた料理といわれている。
ジンギスカン」の発祥は諸説あるが、昭和のはじめごろ、羊肉を食べる習慣のなかった日本人向けに中国料理の「コウヤンロウ/カオヤンロウ(羊の焼肉)」を参考に考案されたなど、いわれている。
いまでは全国的にも有名となり、平成19年(2007年)には「石狩鍋」、「鮭のチャンチャン焼き」とともに、「農山漁村の郷土料理百選農林水産省主催)」に選ばれている
食習の機会としては、
戦後しばらくして、一般家庭まで広がったとされ、現在では、1年を通して各家庭の食卓にも並ぶことが多い。春には花見、夏にはバーベキューなど、家族や友人などで集まる際、屋外でジンギスカンパーティーをすることもある。
飲食方法としては、
羊肉には独特の臭みがあるため、食べ方は生のまま羊肉を焼いてタレにつけて食べる「ジンギスカン」と、あらかじめ醤油ベースなどの特製タレに付け込まれた羊肉を焼く、「味付きのジンギスカン」の2種類がある。
北海道の家庭では、「ジンギスカン用の鍋」を持っていることが多い。ジンギスカン鍋は中央が盛り上がり、焼く部分に溝がある。その形状から、羊肉の肉汁がまわりの野菜に流れ落ちることで味が染み込み、美味しくいただける。一緒に焼く野菜は家庭によってさまざまである。
羊肉は、生後1年未満の子羊の「ラム」と生後2年以上の「マトン」のどちらも食される。「ラム」は、臭みが少ないのが特徴であり、「ラム」と比べて「マトン」の方は多少クセがあり脂が乗っていてしっかりとした味が特徴である。

二人は、熱くなったジンギスカン用鍋の上に厚切りの「特上ラム」を並べ、
周りの溝の部分へキャベツ、玉ねぎ、ニンジン、もやしなどを並べた。
『ジュウジュウ』と美味しそうな焼ける音と匂いが立ち上る。
ジンギスカン用鍋から立ち上る白い煙は、
各テーブルの上に設置された集煙器へ吸われ洋服に匂いが付かない工夫がされている。
ラムは元々脂肪分が少ない肉質で、
特に羊肉の脂肪は、人の体温では溶けず体内へ吸収されないため
高蛋白低脂肪食として非常に健康に良いと言われている。
二人は『こんな豪華なダイエットならいつでもいいね』と笑ってガッツリと食べた。
やがて肉が十分に焼けて、肉汁が野菜へしみ込んだら食べ時でタレに浸けて食べる。
羊独特の香りが鼻腔をくすぐる。
よく考えると少しかわいそうだが、
まだ生まれて1年以内のミルクで育った子羊の柔らかい肉は美味しかった。

丸井今井三越などでウインドーショッピングして、
3時のおやつには、(札幌はスイーツの店が多過ぎて絞ることが難しいのだが)
今回は、大通西3丁目北洋大通センター大通ビッセ1Fにある
「きのとや大通公園店・KINOTOYA Café」にした。
この「きのとや」という洋菓子店は、本店は白石区にあって、
1983年創業の歴史のある店で地元に愛され続ける人気の店である。
創業当初はケーキやシュークリームなどの生菓子が中心だったが、
北海道大学と提携したクッキー「札幌農学校」がヒットし、
それを機会としてその後バームクーヘン・焼きチーズタルトなども作り始めて
それらも人気となり、2014年には東京進出しているという情報がある。
「きのとや大通公園店・KINOTOYA Café」に入ると、
大通り公園側の壁が、
全て大きなガラス窓で解放されており、
明るく暖かい日差しが降り注いでいる。
店内の席は62席もあり、
ひろびろとして多くの老若男女が笑顔でスウィーツを楽しんでいる。
美波たちは、コーヒーと紅茶、
人気ナンバーワンスイーツの『オムパフェ』と『極上牛乳ソフト』を頼んだ。

『オムパフェ』
ふわふわのオムレット生地に、カスタードクリーム・バナナ・ぎゅうひ・粒餡を詰めこんで、その上にたっぷりの生クリームとイチゴ・キウイ・ミカンなど6種のフルーツがたっぷりと飾られたボリューム満点のスイーツ。518円の価格の割には豪華で非常にお得なケーキだった。

『極上牛乳ソフト』 
席に運ばれて来た時、その巻かれたソフトの高さに二人ともびっくり。
手に持つとずっしりと感じる重量感で、クリームをスプーンで取って口の中に入れると『モッチモチ』の食感で通常のソフトクリームのようにさらっとなくならず、ゆっくりと溶けて行く感じで、さすが北海道と笑みがこぼれるほどの、今までのソフトクリームの概念を覆すようなミルクの濃厚さと甘すぎないクリームが舌を直撃する。コーン部分もこんがり焼かれたカリカリの薄いワッフル生地で美味しかった。価格も388円とこれも非常にお得感がある。

「キャアー、甘くておいしい・・・」
ジンギスカンでダイエットした意味が無かったね」と二人は大笑いした。
二人は、スイーツのカロリー消費を考えて実家まで歩いた。
家には二人が感激した『オムパフェ』をお土産にした。
そして夜まで弟妹と遊んで晩御飯も食べて小樽まで車で送ってもらったのだった。