先ずはこの旅一番の目的の『流氷観光』である。
ちょうど今、風の方向がちょうど陸地方向で流氷が沖合に来ているらしい。
二人は乗船券を購入し接岸している『流氷砕氷船ガリンコ号Ⅱ』に乗り込んだ。
乗船してすぐに二人の目に飛び込んできたのは
船舶前部に開かれて流氷を呼び込む空間に設置されている
船体の半分ほどの長さの巨大な二本の金属ドリルだった。
その鈍い光は流氷を今か今かと待っているように感じた。
やがて出航の船内アナウンスが流れ、より強くエンジン音が響き離岸した。
ゆったりとしたスピードで『オホーツクブルーの海』を進んでいく。
遥か遠くまで蒼い海面が広がっている。
風は強く波頭が船側を叩き、その振動が縦横に上下に船体を揺らす。
多くの観光客がデッキへ出て歓声を上げながら写真を撮っている。
白い帯が見え始めそこへ向かっていく。
流氷に鳥などの影が見える。
オジロワシとのアナウンスがあった。
近くの流氷に休んでいたゼニアザラシが、
ガリンコ号に驚いて海へ飛び込んでいる。
白く太い流氷の帯へ一直線に突入していく。
船の前面に設置されている2本のスクリューが回転し流氷を砕いて進んでいく。
船名そのままに『ガリガリッ』と
硬い氷を砕く音とその振動が身体へ伝わる。
目の前浮かぶ大きな流氷が大きなドリルで粉々に砕け散っていく。
その迫力たるや圧巻であった。
しかし、大きな氷に当たると船も大きく揺れるので船酔いに弱い人は注意すべきで
美波も芳賀さんもやはり酔ってしまった。
二人は暖かい船室へ戻り、窓から海と空を見て回復を待った。
船の揺れがなくなり氷を砕く音も一切なくなった。
船はもう港へ帰るのかと思っていたら湾内の海面上に浮く小さく薄い氷を砕き始めた。
『ハスの葉』のような形の氷が離れたり重なったりしながら海面に漂っている。
この形の氷が流氷の最初のできるもので
『これが成長してさきほどの大きな流氷に育っていく』
とアナウンスされて驚いた二人だった。
(つづく)