はっちゃんZのブログ小説

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54.ドライブへの誘い

北海道はお盆を過ぎると急速に日差しが弱くなり肌に当たる風が冷たくなり始める。

そして夏休みが終わる9月になると朝夕は10度以下の日も出始める。

日中でも20度は越えなくなり、街を歩く半そでの人も激減してくる。

近くの山々からは急速に緑が失われてくる。

激しいまでの夏の眩しさが過ぎ去り実りの秋へと向かい始める。

 

夏休みが終わって同級生達が再来年の春からの就職について話し始めている。

美波は就職までまだ一年以上あると思っていたが意外と早く同級生達は意識している。

美波としては入学当初、父の仕事を見ていたため

漠然と金融関係で就職をしたいと考えていた。

しかし、いざ就職となると配属先の事もあり、

地元と言っても事実上両親が転勤族のため地元の米子にはいないし、

地元そのものが既にない状況だった。

仮に配属が札幌市以外になった場合、両親が札幌市以外へ転勤すると

今度こそいよいよ本当に一人だけの生活となる可能性が高い。

地銀ならば北海道内に配属先が限定される可能性もあり、

都市銀行ならば全国どこに配属されるかわからないので不安だった。

友人の芳賀さんは、札幌が好きらしく札幌市内の就職を目指しているらしい。

 

新学期も始まり授業にクラブに忙しい毎日が続く。

そろそろ雪虫も飛び始めるかもとか噂になり始める頃

前田さんから電話があった。

前田:この前は中山峠で偶然会って驚きました。元気そうで良かったです。

日下:私も驚きました。前田さんこそお元気そうで良かったです。

   それはそうと優しそうなお姉さんとお子さんはお元気ですか?

前田:元気過ぎて困っています。余市へしょっちゅう呼ばれてアッシーをしています。

日下:まだまだお子さんも小さいから大変ですね。やはり前田さんは優しいですね。

前田:まあ、家族だから仕方ないし、初めての従兄弟も可愛いしね。

   会うのが楽しみな時もあります。

日下:そうでしょうね。私も年の離れた弟と妹が可愛いです。

前田:そろそろ同級生は就職の話を始めてませんか?

日下:ええ、最近、友人達が就職の話を始めまてます。

前田:先週に後輩から色々と相談がありました。日下さんは大丈夫?

日下:みんながそんなに早く考えていると知って驚いています

前田:そうでしょうね。僕もそうでした。ゆったりと考えていて焦りました。

日下:前田さんでもそんな事があるのですね。何か安心しました。

前田:いや、安心しないほうがいいよ。

   でもゆっくりとした気持ちで探せばいいと思う。

日下:そうですね。

前田:それはそうとこの前偶然会ったこともあるし、

   ちょうど今度の土日に休みが取れたんだ。

   日下さんは何か用事が入っていますか?

日下:特にはないです。

前田:じゃあ、もし良かったら少しドライブでもしませんか?

   ちょっと行って見たいところがあって。

   帯広方面で少し遠いんだけど。

 

美波は彼からの突然のお誘いに驚いたが、

彼と二人きりの時間を過ごすことを想像すると少し鼓動が早くなった。

日下:はい、お願いします。

前田:ありがとう。当日はあなたのマンションの前に車をつけます。

   帰りは札幌のご両親の家まで送ろうと思ってるんだけど。

日下:ええっ?いいんですか?

   ありがとうございます。

前田:朝少し早くて7時くらいになるけどいいですか?

日下:7時ですか?わかりました。

   だけどマンションの前だとすごく目立つので小樽駅の近くでお願いします。

前田:じゃあ、小樽駅近くの小樽市産業会館の前でどうだろう?

日下:そうですね。そこがわかりやすいです。

前田:急な話なのにありがとう。

   当日を楽しみにしています。では当日に。

日下:はい、私も楽しみです。おやすみなさい。

前田:おやすみなさい。

(つづく)