ある夜、華田がお気に入り秘書を膝に乗せている頃、携帯の呼び出し音が鳴った。
画面を見た途端、弾かれたように立ち上がった。
膝に横座りした秘書はそのまま悲鳴を上げて床へ落ちた。
椅子から立ち上がって直立不動で電話に出ている。
「ええ、うちの事業は順調です。
えっ?は、はい、急に今の倍にしろと言われても、
は、はい、確かに外道組からのお金が減ったのはわかりますが、
ええ、臓器売買、人身売買、詐欺、覚醒剤、銀行強盗とか軒並みですね。
でもうちのルートの臓器売買、人身売買、覚醒剤は残っていますよ。
ただうちもあまり世間にばれても困るものですから、そう派手には・・・
えっ?はい、そりゃあ、ばれれば、
顔を変えてすぐにそちらに帰ればいいだけですが・・・
では、朴川に指示しあの青山の連中を使ってもっと稼ぎます」
「あ、はい、その件ですが、実はあの写真の男の行方はまだわかりません。
噂の超人技の探偵かどうかもわかりませんが、たぶん同一人物と思います。
はい、申し訳ありません。探偵事務所を片っ端から女に調べさせましたが
全くみつかりません。あの体格ですからわかりそうな気もするのですが」
「それは本国と比べれば、猫の額ほどの狭い国でしょうが、
住んでみると意外と人間も多くてですね、
東京いや日本で一人の人間を探すのは砂漠で針を拾うより難しいので・・・
いえ、無理とは言っていません。
えっ?
はい、あの探偵を何とか探します。
どうか命だけは助けて下さい」
華田の額はみるみる汗でびっしょりとなった。
青山にある社長屋敷の調査は困難を極めた。
閑静な住宅街なので意外と音が響くのである。
屋敷へ車やバイクなどで近づこうにも、
屋敷からあらゆる角度を複数台のカメラで監視されている。
雨の降る夜に闇に紛れてステルスタイプのドローンを飛ばし屋敷内を撮影した。
またクモ大助をドローンから屋根へ降ろし待機させた。
室内へ侵入させてより深い情報をと考えたが、
ここで証拠を残して怪しまれたら全て元の木阿弥と考えて侵入させなかった。
(続く)