はっちゃんZのブログ小説

スマホの方は『PC版』『横』の方が読みやすいです。ブログトップから掲載されています作品のもくじの章の青文字をクリックすればそこへ飛びます。

小説3:さざなみにゆられてー北海道編ー

29.端午の節句(初節句)

いよいよ初節句の日を迎えた。 庭がないので和室の柱に小さめのこいのぼりと床の間に五月人形を飾った。 主役の雄樹へ袴羽織を着せた。 雄樹はまだまだ小さい割にしっかりと立ち始めている。 雄樹はそれらに興味があるのか、 こいのぼりを見上げたり、 人形…

28.支笏湖と三大秘湖のオコタンペ湖2

すれ違う車もないまま、看板に従ってなだらかな下り坂を走らせる。 やがて「丸駒温泉」が見えた。 支笏湖に面する割合に大きな旅館で車も結構止まっている。 キャンプ場駐車へ車を停めて、子供達をベビーカーに乗せて、 家族用テントを出して、お弁当を肩に…

27.支笏湖と三大秘湖のオコタンペ湖1

札幌の街なかの根雪もなくなりしばらくした4月の終わり、 風はまだ冷たいが暖かい日差しが窓から差し込んできている。 早いもので札幌へ来て、もう一年が経ったことに慎一は気がついた。 子供達も少しの風邪くらいのもので大きな病気もせずにすくすくと育っ…

26.静香始動

静香は子育ての傍らテレビや新聞で株式投資について勉強し始めた。 お遊び程度のちょうどいい金額の口座にあったことと 子育ての隙間時間で出来るもので稼げるものはないかと考えていた。 中小株の分類に入る会社で、株主優待の送られてくる会社を探し始めた…

25.桃の節句(初節句)

そろそろ夏姫の初節句(桃の日)が近づいてきている。 静香の実家から『雛人形』(七段飾り)が贈られてきた。 雛人形を飾るのに最適と言われる2月20日頃(雨水の日)に飾った。 子供達が珍しがって、せっかくの雛人形が大変なことになっても困るので、 雛祭…

24.流氷観光3

ガリンコステーションに下船し、オホーツクタワーまで電気自動車に乗って移動する。 オホーツクタワーは波止の突端に建設されており、 エレベーターで最下層まで下りていくとヒヤリとした『海洋生物の部屋』になっている。 そこには有名なクリオネの大きな水…

23.流氷観光2

先ずはこの旅一番の目的の『流氷観光』である。 ちょうど今、風の方向がちょうど陸地方向で流氷が沖合に来ているらしい。 二人は乗船券を購入し接岸している『流氷砕氷船ガリンコ号Ⅱ』に乗り込んだ。 乗船してすぐに二人の目に飛び込んできたのは 船舶前部に…

22.流氷観光1

家庭教師のアルバイトと 土日の友人とのたまの札幌でのショッピングやスイーツ探しや 実家に泊まった時は弟・妹と遊びながら毎日が過ぎていく。 高校受験生のため家庭教師の日数も1日増えて週3日となっている。 そして彼女のご両親から多目のアルバイト料を…

21.美波の憂鬱

最近、友人の香山さんがやたら美波へ意地悪をしてくるため気分がすぐれなかった。 美波が何か悪い事でもやっていれば謝ろうと理由を聞いてみても、 『別に』と答えるだけで理由がわからないままだった。 米子にいる時にも同じようなことを何度か経験していて…

20.お食い初め

もうそろそろ雄樹と夏姫の100日のお食い初めが近づいてきている。 歯固めの儀式用に北海道神宮内で 誰も踏んでいないと思われる場所の白い小石を6個拾い綺麗に洗い乾燥させた。 スーパーマーケットで真鯛2匹を買い、お食い初めの準備をした。 静香が真鯛の塩…

19.シシャモ祭りとラムジンギスカン

翌週、鵡川町で『シシャモ祭り』が開始されているため、 ドライブがてら鵡川港へ向かった。 鵡川町に入ると道中に多くのシシャモ販売店が並んでいるのでそこで買ってもいいが、 「『鵡川のシシャモ』は鵡川港で上がったものが本物」と同僚に言われたからだ。…

18.銀杏の下で

冬が近づいてくると米子と違い、一気に札幌の街が染まり始める。 ニュースで北海道大学内の銀杏通りが紹介されている。 慎一は、家族で出かけた。 『北海道大学』は、1876年本学の前身となる札幌農学校から開校され、 面積は1,776,24 9㎡(東京ドームで約38…

17.お宮参りと育児への参加

8月末にお宮参りのお祓いを北海道神宮へ予約した。 雄樹と夏姫は良い子でお祓いの間、静かにずっと眠っている。 ちょうど最近は、昼夜逆転しているために午前中は睡眠の時間帯だった。 写真屋でレンタル衣装を借りて雄樹と夏姫をおめかしさせて、 日下と後藤…

16.子供たちのお披露目

神戸から慎一の両親と妹夫婦と子供、仙台から静香の母親と兄夫婦が札幌へ来た。 全員札幌は初めてで夏場にも関わらずその湿気の無い気候に驚いている。 神戸組5人は日帰り、仙台組は3人なので一泊を予定している。 せっかくなので全国でも有名な円山『すし善…

15.誕生

金曜日の夜にとうとう記憶にある痛みが襲ってきた。 夫へすぐに声を掛けて、 入院グッズの詰めたカバンと一緒に病院へ連れて行ってもらった。 生まれるにはまだ時間がかかることを伝えて、外で待ってもらった。 夫は美波へ連絡しているみたいだったが、 電車…

14.雪のイベント

2月の北海道は、全エリアで雪の行事が盛り沢山だ。 札幌市では『さっぽろ雪祭り』が2月上旬から中旬にかけて開催される。 その同じ時期に小樽市では『小樽雪あかりの路』が開催される。 その他近隣では、『支笏湖氷爆祭』『層雲峡氷爆祭』『旭川冬まつり』な…

13.ゲレンデ

北海道の雪は、「ユキムシ」がその訪れを知らせ、 遠くに見える高い山が「初冠雪」し、 街中に「初雪」が降り「初積雪」となり春まで「根雪」となる。 12月には背丈以上の雪壁が出来て小樽の街も大学も白く染まる。 テニスサークルがウィンタースポーツサー…

12.サークル

大学の講義も最初は高校時代の延長なのでそれほど難しくはなかった。 サークルはとても楽しかった。少しずつ友達も増えてきている。 みんな受験から解放されての大学生活なので大いに羽を伸ばしている様子だった。 土日の休みには女の子同士で札幌市へ出掛け…

11.母の再婚と強がり娘

入学してしばらくすると母から電話があった。 「美波、実はね・・・日下さんとね?うーん、あのね」 「結婚するんでしょ?」 「えっ?なぜわかったの?」 「お母さんを見てたらわかるよ。お母さん、良かったね。今度はおじさん、 いや、お父さんだった、お父…

10.独立への一歩

大学1・2 年は基礎科目の授業ばかりで、 オリエンテーションでの説明では、「人間と文化」「社会と人間」「自然と環境」「知の基礎」「健康科学」の5つの系に分かれて、それに付随する形で、文学,哲学,心理学,歴史学,社会学,社会思想史,化学,生物学…

9.美波、学生生活スタート

ここで時間は1年前にさかのぼる。 美波は1999年4月に小樽商科大学に入学した。 大学の講堂では狭いため、 入学式は小樽市内の市民講堂を使っての大掛かりのものだった。 新入生には両親や祖父母まで一緒に来て 全員で大喜びしているのを見て、 少し羨ましく…

8.YOSAKOIソーラン祭り

梅雨のないカラリと晴れた6月上旬、北海道が熱くなる。 初夏の札幌を鮮やかに彩る『YOSAKOIソーラン祭り』が開催されるからだ。 慎一の本店の屋上からは祭り会場が見えるため 一部の社員が総務に内緒でビール片手に自家製ビアガーデンを開いている。 …

7.美波の誕生日

美波の誕生日は5月19日の金曜日だったので 翌日の土曜日20日に20歳のお誕生会をすることとした。 まさか北海道で娘の20歳の誕生日を一緒に祝えるとは思ってもいなかったからだ。 場所はJRタワーホテルにある有名なフレンチレストランを予約した。 エレベー…

6.二人でコーヒー

ある土曜日に札幌市を一望に見渡せる藻岩山をロープウェイで登った。 展望台からは日本海や札幌市の街並みの全景が綺麗に見えている。 夜景だったらどんなに綺麗だろうかと感じた。 下山してきた場所に喫茶店があった。 『ろいず珈琲 旧小熊邸』 外側にはテ…

5.初出勤

月曜朝早く目覚めた。 新聞を読み、朝ご飯を食べて、手作りのネクタイをきゅっと締めて部屋を出た。 妻の『いってらっしゃい』の声を背中に受けての気合いの朝だった。 新たに発足する新銀行『六花銀行本店』は大通公園に面する北側の通りにある。 銀行に着…

4.慎一の自覚と不安

慎一は妻から妊娠の事実を告げられた時、 いつかそうなるとわかっていたが、 その瞬間はどう考えていいのかわからなかった。 自分とは異なる人間の中に自分の半分と同じ人間がいるという不思議な感覚だった。 『あなたの赤ちゃんが欲しい』と言っていたので…

3.美波の戸惑い

美波は部屋を大体片付け終わったので昼前に小樽へ帰った。 電車の中で昨夜の双子ちゃんのことを思い出し、 お母さんが今の私と同じ年齢で身ごもったことを思い出した。 私が生まれて数年暮らしてお父さんが亡くなり美波を一人で育てた。 それは今の自分には…

2.初めての胎動

ホテルでの夕食後美波が部屋で片づけをしている。 慎一はテレビを見ながら静香と二人でゆったりとお茶を飲んでいる。 美波は明日の昼には小樽へ戻るそうだ。 慎一はしみじみと妻を見た。 最近の静香は新婚旅行当時と違って、 さすがにお腹もふっくらとしてき…

1.札幌へ

新千歳空港のボーディング・ブリッジへ慎一と静香は降り立った。 3月末にも関わらず、空港の周辺にはまだ雪が残っている。 ブリッジを流れる空気が肌を引き締める。 北の都の春はまだまだ遠い。 JR快速エアポートに乗り札幌市を目差す。 窓の曇りを掃うと…