花火が終わり、部屋へ戻って子供達をそっと和室の布団に寝かせると
コーヒーでも飲もうと言うことになった。
部屋のテーブルには豆のまま小分け包装されたコーヒーと
電動ミルとペーパーフィルターが備え付けられている。
人数分のコーヒー豆を電動ミルに入れて粉砕する。
そっとペーパーフィルターに入れると、
あたり一面がコーヒーの香りに満たされる。
湯をそっと少量注ぐとコーヒー粉がゆっくりと膨らんでいく。
十分に膨らむとお湯を入れる時間が訪れる。
コーヒーから出るエグ味をフィルターへ吸着させるように注いでいく。
出来上がった馥郁たる香りのコーヒーをカップに注いで静香と美波へ渡す。
慎一はブラック、
静香はミルク入り、
美波はミルク砂糖入りのコーヒーを楽しんだ。
朝食は2階にある『北の番屋』だった。
ここはバイキング日本一になったと同僚から聞いていたため楽しみだった。
近海でとれる新鮮な刺身や焼物などが並び、
ビュッフェスタイルで楽しめる和風レストランだった。
函館ならではの朝取れの魚やイカ、北海道の海産物の味覚が全て並んでいる。
慎一は、子供達用にお椀にご飯を入れてイクラ、ダシ巻玉子、焼き魚を盛り、アラ汁の汁だけを入れたものとミルクとデザートのフルーツ盛り合わせを二つ作った。
いったん席に戻って静香と美波へ渡すと、
子供達は待ちきれないように「マンマ、マンマ」と手を出してくる。
静香と美波は二人にミニ海鮮丼を頬張らせている。
慎一は、急いでどんぶりにイカ、ウニ、マグロ、タイ、ヒラメ、イクラ、ダシ巻玉子、焼き蟹を散らせたデラックス海鮮丼を作り、アラ汁を持って戻った。
そして、そのデラックス海鮮丼を味わいながらかきこんだ。
イカの歯ごたえと甘さ、
大間マグロの赤身の濃い味、
ヒラメのあっさりとしながらも深い味、
焼き蟹の香ばしさと特有の甘さ、
時折プチプチはじけるイクラの醤油漬が混じり合った中でも各々が主張している。
これは日本一と言われるのがわかる逸品であった。
イカに関しては、結構うるさい慎一は
山陰地方のシロイカの歯応えと甘みを好んでいたが、
函館の朝の獲れたてのイカの身の心地良い歯ごたえも最高だった。
ただ昨晩食べたイカは夕方まで熟成させておりその強い甘みの方が好みだった。
慎一が食べ終わると、次は静香と美波が朝ご飯を取りに行く。
慎一は子供達にフルーツを頬張らせて静かにさせている。
ふとバイキングコーナーを見ると、
二人は目を輝かせてどんぶりに海産物を盛っている。
どうやら二人は慎一と同じデラックス海鮮丼を作っているようだ。
美波は大好きなイクラをどんぶりから溢れるほどに入れている。
スプーンで食べる方が理にかなっているほどの盛り方だった。
相変わらずの双子母娘は
「これは絶対に太るわ」と笑い合いながらもりもり食べている。
(つづく)