「局アナ盗撮事件を解明せよ」が解決してしばらくすると、
京一郎から連絡があり、目黒研究所へ急行した。
以前、翔の脊椎液から抽出された未知の物質に関して
知らせると言われたからだ。
天才科学者、京一郎は悔しそうな顔をして話し始めた。
当然のことながら未知の物質なので物質名はなかった。
ただ世界中の隕石を調査したが同じものはなかったそうだ。
今後、新物質として論文を発表予定となっている。
物質名『ショユリウム(翔と百合を足した名前)』
として申請するらしい。
何かわからないがその性質は、
松果体への石灰化を防ぐ事はわかっただけだった。
超能力の原因もわからなかったし、
相変わらず翔の松果体は少年のままだった。
再度、脊椎液を採取された。
ヨーガにおいて松果体は、6番目のチャクラ(アージュニャー)で第3の目と言われているし、7番目のチャクラ(サハスラーラ)と結び付けられることもあるらしい。また天才と呼ばれる人や超能力者は、一般の人間より松果体が大きく発達し活性化していると言われているらしい。松果体が目覚めるとテレパシーが使えるようになると信じる人もいる。
翔はあまり科学的ではないことに気がついたが、超能力自体がきっと科学的ではないのだろうと思い直した。
百合はじっと聞いていたが
翔の身体に心配がないようで安心したみたいだった。
実は、兄には話していないが
以前、一緒に眠っていた時、翔の声で起こされた。
嫌な夢でも見ているのか
「百合、こっちに来ちゃだめ。危ない、逃げて百合」
その時、翔の身体が一瞬ぼやけて
頭の下に回された腕の厚みが無くなったことがあった。
でもすぐに身体がはっきりと見え始め翔が目を覚ました。
「ああ、ふう、夢か、良かった」
「悪い夢? 翔、私はここにいるわよ。安心して」
「うん、ふう・・・良かったあ・・・百合・・・いい匂い」
「ふふふ、もう、翔ったら・・・あん・・・
眠る前にも・・・あん・・・好き」
と夜中にまたもや抱きあったことがあったのだ。
そして、そんなことは数度あった。
こんなことを言うと兄がまたもや変なことをし始めるので黙っていた。
しばらく兄の残念報告を聞きながらコーヒーを飲んでいた時
紅柳瑠璃博士が部屋へ入ってきて、
翔と百合の前に披露宴の招待状が置かれた。
なんと百合の兄の京一郎と紅柳瑠璃博士が結婚するというのだ。
結婚式そのものは
館林一族と紅柳一族が集まるそうで百合は列席することになる。
その後の新郎新婦のお披露目パーティだった。
以前の事件で紅柳博士が副所長となってから
やたら仲がいいなと思っていたら案の定だった。
表立っては京一郎さんと新婦瑠璃さんの友人ばかりの披露宴となっている。
(つづく)