はっちゃんZのブログ小説

スマホの方は『PC版』『横』の方が読みやすいです。ブログトップから掲載されています作品のもくじの章の青文字をクリックすればそこへ飛びます。

128.学園を守れ4

校長、事務長、生徒会長、副会長の状況は調査できたが、優秀な生徒のライバル校への転校の原因がわからなかった。
校長や事務長の会話からも誰が裏で糸を引いているのか判明しなかった。
校長や事務長の聞き耳タマゴから明確になった「学園資金の横流し(上納金)」の原因は、女子生徒堕胎の当事者である証拠を握られた校長とヤクザの美人局に引っかかった事務長が、『教育者たるものがする事ではない、館林グループへ言いつけるぞ』との「倉持組下部組織小銭組組長猫田」の恫喝に屈し、上納金支払いを受諾したことだった。
システムとしては、奨学金などの必要な生徒数を水増しし、書類を偽造してグループから毎月初めに資金を振り込ませるもので、生徒へは企業の収益があまり良くないので金額が減額されたと納得させ、上前を撥ねてそれで出来た金を「倉持組下部組織小銭組」へ渡していた。

そんな時、柔道大会全国上位の「熊田寅蔵」の転校の噂で校内が持ちきりになった。
熊田の行動を監視することになったが、実家から通っており寮には住んでいない。
急いで柔道部部室へクモ助を侵入させ、
熊田の学生服の襟のカラーの裏へ「聞き耳タマゴ」を埋め込んだ。
熊田の友人との会話からは、
今度の転校で転校する高校と同系列大学への推薦入学が決まっており、
奨学金も出るし、将来はオリンピックを目指すと公言している。
辛抱強く聞き耳タマゴで調査して数日が過ぎた。
自宅に帰宅した熊田へ母親が
「寅蔵、お前、色々といい気になってみんなに話しているみたいだけど、
 まかり間違ってもあの先生のことは話したらいけないよ。
 もしばれたら今度の転校は中止になるし、お父さんの仕事にも関係するからね」
「おふくろ、わかってるよ。俺もそこまで馬鹿じゃない」
「しかしお前は心配だねえ」
「大丈夫、教頭のことは絶対に言わないから」
「馬鹿、そんな大きな声で言って。誰が聞いているかわからないのに」
「ごめん、でもわかってるから。
 もしバレたら俺の人生も終わるのはわかってるから」
「そうなら、いいんだけど。気をつけるのよ。
 お父さんの取引もそろそろ大事な時期だから」
「わかったから、それより早く飯にしてくれよ。腹減ったよ」
「はいはい、わかればいいんだよ。じゃあご飯を用意するわよ」
これでやっと『転校の黒幕』が明確になったのだった。

藤原教頭は、手元資料によると
元々は教育委員会関係の先生で生活も乱れたところもなく真面目な人物という評判だった。
翔は急いで藤原教頭の調査に入った。
教頭室は校長室の隣で、登下校時は必ず校門付近で生徒達を見守っている。
穏やかな雰囲気の立派な教育者然としていて、
とても学園を裏切るような事をしているようには見えなかった。
教頭の監視に入って数日が経った。
帰宅後も色々と監視しているがなかなか尻尾を出さない。
そんな時、クモ助からある画像が送られてきた。
その画像は何と驚いたことに
『教頭が室内でコカインらしき粉末を鼻から吸引している姿』だった。
注射ならば腕などに注射跡が目立ち、常習者とわかってしまうがこれではわからなかった。
ただ教頭の動きで目立つのは、よくワイシャツの上からでも腕とかやの皮膚をゴリゴリと搔き毟る仕草が増えてきている。その点から考えると、コカインの『皮膚|寄生虫妄想』と言うコカイン乱用の末期症状が出て来ている可能性が高く早急に対応する必要を感じた。
しばらくするとスマホで連絡を取りながら新宿の裏道で売人と会ってるのを確認した。
その売人は「倉持組下部組織新宿小金組所属」で場所も突き止めた。

教頭の生徒を転校させるシステムは、
定期的に地下鉄や電車で赤坂まで出て、ホテルのロビーでライバル高校の校長・教頭と会い、優秀な生徒のファイルを渡し、転校の可能性を相談し、ライバル高校の資金の準備とか卒業後の進路などを打ち合わせて、該当している生徒の進路相談の前に、先にその生徒のご両親に会い、固く口留めをして転校を進めている。

両親としては今の学園も良いが、お金を貰ったり、子供の大学やその後までケアしてくれたり、両親の仕事にも有利な事が可能な事を聞くとすぐに承諾した。そして両親から子供を説得させる。その結果、転校がうまく行けば、ライバル校から仲介料も入るし、生徒の両親からもいくばくかの謝礼金も手に入った。教頭はそのお金でコカインを購入し今日に至る。
元々コカインは、倉持組傘下のキャバクラで飲んでいた時に、仲良くなったキャバ嬢に教えられて、そこからはまったようだった。教頭自身は倉持組が校長や事務長と繋がっている事も知らなかった。

ここで翔と百合は困った事に気が付いた。
校長、教頭、事務長をそのまま警察に逮捕させてもいいのだが、
校長→東京都青少年の健全な育成に関する条例違反
教頭→麻薬及び向精神薬取締法違反
事務長→背任罪
でマスコミに大騒ぎされても学園経営が成り立たなくなってしまう事だった。
当然まだ将来のある在校生も多く、歴史から考えても廃校は避ける必要があった。
この事件がまだ警察にも外部にも漏れていない今こそ最善の策を考える必要があった。

そこで今のところ、
全ての状況を葉山の隆一郎翁には知らせず、
理事長へ報告し判断を仰ぐこととした。
これを聞いた理事長は、
最初は事の重大さに唖然として驚き、
次に彼らの裏切りに対して顔を真っ赤にして怒り、
最後には自らの判断力の無さに真っ青な顔となり頭を抱えた。
そして
『一族に顔向け出来ません。今すぐに切腹をします』
と言ってきかなかったが、
『死ぬ事は逃げる事。そんな事で何も変わりません。
 夢のある生徒の将来のためにも学園を立て直して下さい。
 それがあなたが一族へ報いる唯一の方法と考えます』と翔と百合が説得した。
この2月末までに膿は一気に出し切り、
4月の新学期から学園の体制を新しく変える事として再建プランを練る事とした。
将来的には、この学園は高校だけでなく大学も設立して、海外へも学校を展開する予定である。

学園再建案
1.学校名変更
  四月一日より学校名を「文武錬成学園」と変更し、
  教師も生徒も心機一転させる。
  錬成の意味:心身・技術などを鍛えて立派なものにすること
2.学園への一族の関与
  教育及び経営に関する責任者は全て一族の人間で固める。
  次期校長・教頭は、一族が経営する他の学校から赴任させる。
  教員も一族の経営する各学校間で移動させ切磋琢磨させる。
  武道系クラブのコーチは一族の者が対応する。
3.学園経営
  現校長・教頭・事務長へは以下対応とする。
  原則として、懲戒解雇相当ではあるが恨みを残さないような方法を取る。
  校長:犯罪内容を家族へ理解して頂いた上で家庭の不幸での突然の退職とする。
     退職金・功労金は無し。
  教頭:犯罪内容を家族へ理解して頂き、
     一族経営の精神病院にて覚せい剤離脱療法を実施し社会復帰させる。
     退職金・功労金は無し。もし復帰できなければそのまま一生入院。
  事務長:犯罪内容を家族へ理解して頂いた上で、他県の一族会社の事務員として
      常に監視対象として雇用する。退職金・功労金は無し。
      もし反省の色が見えないと判断したら即解雇。口止めも実施。
4,生徒:近隣の県の学校に通う一族の子弟を入学させ、
     他の生徒に範を見せる意味で文武錬成を率先させる。
     ①文武連合の不良生徒は、元用務員を雇い直して傷害罪で訴えさせる。
      生徒への対応としては犯罪を犯したため即退学とする。
      実家が金持ちなので別に困らないはずだった。
     ②生徒会長に関しては、翔が責任を持って対応する。
      あくまでも不良への指示命令であり、犯罪に問うのは無理がある。
      ただこちらの指示に従わない場合は推薦も含めて取り消し退学させる。
      副会長に関しては、不問とする。

      彼女の海外への夢の手伝いを百合がする。
     ③ライバル校へ転校する生徒に関しても不問とする。
      但し、奨学金等を活用している場合は、即時全額学園へ戻させる。

ここから翔は、学園の改革の前に
先ずは犯罪組織を壊滅し後願の憂いを絶つ事とした。
翌日から「倉持組下部組織小銭組」「倉持組下部組織新宿小金組」へクモ助を侵入させ、違法の証拠をドシドシ集めて行った。

その結果、
「倉持組下部組織小銭組」
 銃刀法違反、違法ギャンブル、売春法違反、殺人教唆、傷害罪、詐欺罪等
「倉持組下部組織新宿小金組」
 違法薬物製造販売違反、売春法違反、銃刀法違反、殺人教唆、傷害罪、詐欺罪等
の確実な証拠を写真と音声で集めて、構成員全員の顔写真と犯罪歴を都倉警部へ連絡し、両組織の壊滅を依頼した。両組織と警察の熾烈な争いはあったが、当然最後には全員検挙され東京での犯罪組織だった倉持組は下部組織も含めて全て壊滅させた。