はっちゃんZのブログ小説

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113.妖?行方不明者を探せ11

大陸から呼ばれた悪霊と対峙した遼真が

金色に輝く大刀をスラリと抜いて右手で持つと肩へ掛けた。

左手で印を結びながら魔物へ向かっていく。

「臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前」

と唱えながら魔物の身体を切り分けていく。

どうやら身体と魂の繋がっている部分を切り離しているようだ。

一太刀毎に魔物の悲鳴が聞こえてくる。

徐々に魔物の身体と魂がぶれて離れるように揺れていく。

最後の『ン』で心臓部分を一突きして、完全に魂が離れた。

 

悪霊が人間に憑依した場合、

その肉体の持つ霊魂と複数個所が結合して

一つの魂として存在することになる。

そうなれば「魄」へも影響が出て

魔物と同じ姿形や能力を発現できることになる。

遼真の持つ「金狐丸」や真美の持つ「銀狐丸」という霊刀は

肉体を傷付けることなくその魂の結合箇所を切り離す能力を持っている。

魂の結合箇所は、眉間部分と心臓部分が非常に深い部分であり、

それ以外の部分の場所は決まっておらず浅めである。

退治方法としては、

その浅い部分から切り離すことにより痛みで動かなくさせて

最後にその深い部分へ攻撃をするのが常道であった。

 

一振りごとに悪霊の魂から多くの小さな魂が離れていく。

そのたびに悪霊の姿が小さくなっていく。

そして離れた魂は元も持ち主へと戻っていく。

悪霊の魂だけがその場に縫い付けられたように動けない。

今まで喰らった魂を全て返した悪霊の身体を大刀で突き刺す。

「ギャー ヤメテ クレ カエリ タクナイ」

「クソ オノレ オマエ ノ カオ ヲ ワスレナイ

 カナラズ ヤ フク シュウ スル オ ボ エ テ オ レ」

送霊陣発動の呪文が遼真の口から紡ぎだされていく。

送霊陣が赤く輝くと陣の真ん中がポカリと穴が開いた。

そこには底も見えない深い穴が穿たれている。

黒く血液のような生臭い匂いが吹いてくる。

 

そこへ刀に突き刺された魂を持っていく。

その深い穴の境界から奥へ大刀を差し入れる。

大刀に貫かれていた魔物の魂は吸い込まれるように消えた。

遼真は送霊陣を閉じる呪文を唱えた。

送霊陣を象る薄く輝く模様は一度眩しく輝くとすっとその光が消えた。

 

「遼真、何をしたかわからないけど、もうあの魔物はいなくなったの?」

「はい、おかげ様で元のいた世界へ戻すことができました」

「また、出てきたら心配なんだけど」

「今回は、非常に稀なケースでした。

 本来は我々以外に呼ぶことはできない筈でした。

 ただあいつがいる世界の波動もわかったし、

 今後は常にこちらで見張ることができるので心配しないで下さい」

「それなら安心だ。今回は初めてのケースで驚いた。

 二人ともまだ高校生や大学生なのにすごいねえ」

「翔様、過分なお言葉ありがとうございます。

 私も翔様のお力で微力ながらも遼真様をお助けできました」

 

魂が戻った被害者達によると

その時の記憶が全く無く、幸せな夢をずっと見ていたらしい。

恐怖を感じたのは魔物を解き放った人間のみだったようだ。

ただ被害者達は栄養失調の状態なのでしばらくは絶対安静の入院であった。

反社会分子の真日本革命軍の人間は、

桐生一族狐派が催眠術により個人情報を全て把握し

彼らの情報をデータ化し警察や公安と共有し、ここ直近の記憶を消した。

ただ社会へは『スパイダーマン』の都市伝説だけが残った。

(つづく)