はっちゃんZのブログ小説

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108.妖?行方不明者を探せ6

遼真の頭には全ての式神からの映像情報が入ってきたが、
あまりに多いため全ての式神の紙片を手の平へ挟み、広げた地図へと飛ばす。
おのおのの式神達が地図上にゆらゆらと立っている。
細くなった足元がビル名などを知らせている。
魔物の被害者と魔物の場所がわかった遼真はすぐさま翔へ連絡した。
「翔兄さん、魔物の本体と被害者の場所がわかりました。
 地図データを送るので至急急行して下さい」
「遼真、ありがとう。しかしよくわかったな。ここへ急行する」
翔は飯塚警部へデータを転送して被害者の場所へと急がせた。

遼真が式神を飛ばした時、
魔物は人間を襲おうとしていたところだったが
式神に攻撃されたことで自分の存在がばれた事を理解し
魔力と攻撃力を高めるためにじっと身を潜めているらしい。

翔は魔物の本体の場所へと急いだ。
本体は明治神宮が隣接している代々木公園まで来ていた。
驚く事に翔の事務所と目と鼻の先の場所だった。
昼間は廃ビルの中に潜み、夜は公園内で獲物を物色していたのだろう。
飯塚警部より多くの被害者を助けだしたとの連絡があった。
警官が現場へ急行した時、
被害者達は眠っているように部屋の梁へぶら下げられていた。
すぐに病院へ運ばれて処置されているが誰一人として意識は戻っていない。
京一郎の死体の検査結果では
被害者達は魔物に延髄部分から脳のある部分へ代謝を低める物質を注入されており
飲まず食わずでも1週間近くは生きていることができた。
魔物はその間、被害者達の体液を吸って栄養にしていたと想像された。
京一郎は急いでその代謝低下物質を中和する物質を作る準備に入っている。

暗い影のようなものが代々木公園の森の中で一際高い木の梢にうずくまっている。
魔物の意識が周辺へと警戒感を持って漏れていく。


ダレ ガ ワレ ニ アダナス
ワレ ニ コタエ ヨ
知らない お前は強いのだろう?
ワレ ハ ツヨイ
ワレ ハ ダレヨリ モ ツヨイ
ワレ ニハ クルシミ ニクシミ シカナイ
お前は、私に力を貸すのではなかったか?
ソウダ オマエ ニ チカラ ヲ カソウ
オマエ ノ タマシイ ハ ウマイ
ソノ ユガミ ヨゴレ ハ タマシイ ヲ ウマクスル
お前は、私達のために、この日本を壊すために力を貸すのだ
早く総理や大臣へ憑依するのだ

同時に闇から別の声が漏れてくるが、二つの魂には聞こえない。
『こやつらの世の中への憎しみや嫉みの声に我は呼ばれた
 こやつらを媒体にわれはふたたび顕現す
 そして今度こそ、この国を壊し我の物とす
 もっともっと世を憎め、そしてもっともっと人を殺せ』

飯塚警部から真日本革命軍本部の地下室広間の床に書かれた、
不思議な図形の画像が翔と遼真へと送られてきた。
その模様を見て遼真は驚いた。
京都での修行時代に絵図面で見た記憶があったからだった。
その古文書には
遥か昔に大陸より日本へ渡ってきた魔術師の一団が使用していた魔法陣で
その一団は当時の日本を征服しようとしていたと記されている。
すでに現在では使用されなくなったと思われる禁呪の降霊術の魔方陣だった。
この魔方陣は非常に危険な霊魂を呼ぶと言われている。
それは降ろした本人に憑依して本人だけに限らず周りの者をも操る悪霊であった。
現在もカソリック教会がエクソシストを派遣する対象となるほどの悪霊だった。

地下室広間の天井の梁には真日本革命軍の者達が吊り下げられている。
彼らの身体には傷は付けられておらず眠っているだけだった。
もしその場に遼真や真美が居れば彼らには「魂」は無く、
「魄」のみの人間であることがわかるはずだった。
しかし、当然の事ながら警察官にはそのような事はわからない。
被疑者そして被害者として彼ら全員を収容し病院へと運んで行った。

(つづく)