はっちゃんZのブログ小説

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106.妖?行方不明者を探せ4

遼真は木の根元で瞑目して座禅を組んだ。

しばらくして

彼の金色の縁取りのあるダークグレイの瞳が開かれた。

「兄さん、そこの右側の木の上の方を見て下さい。死体があるはずです」

木を見上げると白く長い塊がぶら下がっている。

急いで木を登り、ロープで固定してその死体を地上へと下ろした。

この男は、昔の修験者の格好をしていた。

そして着物に胸の中には御札が入っていた。

遼真が言うにはそれは『魔物を操ることの出来る力を持つ御札』だそうだ。

この男はきっと魔物を操り何かをしたかったが、その前に魔物に襲われたのだろう。

背中の背嚢の荷物の中からは「新日本革命軍」と記銘された書類が出てきた。

翔は急いでその内容をスキャンし、飯塚警部へ送付した。

 

その男の額には

『足の太さ2センチ、体長30センチくらいの蜘の屍骸』が付いている。

顔色は毒々しい暗紫色で醜く歪んだ口元と目元は恐怖に開かれている。

その屍骸は

「魂(こん)」は抜けてしまい「魄(はく)」の波動のみが残っている。

遼真は呪文を唱えながら、その蜘の屍骸を木の枝で挟み白い布へ包んだ。

そして、急いでリュックサックから新しい壷を出すとそれへ押し込んだ。

たちまち白い布は真っ黒に変色して煙が出てボロボロになっていく。

そっとその壷に蓋をすると呪文の書かれた札を貼った。

 

「翔兄さん、これが魔物の本体の抜け殻です。

 魂が抜けてもこのように恐ろしい毒素が出てきます。瘴気とも言いますが。

 江戸時代始めにここへ封印された魔物は、元々はある集団が百年以上かけて代々呪文

 で封印された壷の中へ多くの虫や動物を入れて最強の魔物を作ってきたようです。

 そして最後まで勝ち残ったのがこの蜘蛛だったわけです。

 こいつは魂だけでも生きることができます。

 心根の卑しい人間に取り憑き、その体の機能を蜘蛛そのものにさせる力があって

 人間を食料とするようです」

「じゃあ、今報道されている『スパイダーマン』って、もしかしてこいつが原因?」

「はい、そうだと思います」

「じゃあ、このままだとやばいね」

「本体だけだったらそのまま封印するか抹殺をすればいいのですが、

 今は魂だけの存在になって人間に憑依していいます。

 先ずはその人間を見つけるしかないです」

「被害者となった人間をエサにしていますから簡単には殺さないはずです。

 獲物を生かしながら体液を吸っているはずです。

 この修験者の荷物を調べたら二人分の食料を持っていました。

 ですから、もう一人の修験者へ憑依し移動しているはずです」

「この真日本革命軍の書類を読めば何かヒントがあるかも」

「そうですね。魔物の本体は手に入れましたから、

 早く魔物をこれに封印するだけです」

「その乾燥した化け物みたいな蜘蛛って、まだ動くの?」

「はい、本体の抜け殻ですから非常に親和性が高く再度入ることができるはずです。

 もし封印できないようなら別の方法を考えるだけです。

 まあ魔物に憑依された人間さえ見つければ何とかなりそうです」

「そうなのか・・・よくわからないけど、今Ryokoに至急に調べさせている。

 アスカも怪しい廃ビルをしらみつぶしに調べているはずだ。

 じゃあ、とりあえず事務所の方へ戻ろうか」

「はい、僕も魔物の行方をこの抜け殻を使って探りますので一度家へ戻ります。

 わかり次第、兄さんへ連絡しますからその場所で落ち合いましょう。

 それまでに兄さんの方で見つけられればそれでもいいと思っています。

 憑依された人間と言うものは、

 見た目は普通と全く変わらないので見つけにくいものなのです。

 それに少しでも発見が早い方が被害者の身体が無事な可能性が高いので・・・

 たとえ殺さなくても被害者は徐々に弱って行きますから、

 なるべく早く見つけたいのです」

「そうだったね。急いで戻ろう」

 

翔は祠の森の死体を青いビニルシートに包み、GPS発信装置を付けた。

そして目黒研究所のアイへ人目のつかない夜中にくるように連絡し、

京一郎へこの変死体の調査を依頼した。

そんな時、飯塚警部から真日本革命軍の情報がもたらされた。

どうやらこの組織は、今まで多くの革命テロを画策していたが、

今回はある宗教の筋から入手した古文書へ記載されている魔物を操ることにより、

総理大臣や大臣などを操り日本を転覆させようと考えていたらしい。

ただ真日本革命軍の本部には多くの白い人柱が天井の梁からぶら下がっており、

広間には不思議な模様と多量の血液が滲みこんでいた。

やはり被害の発生が霞が関方向へ東上していると感じた直感は間違いではなかった。

その近くには皇居もあるし、この事件は大変な事態だった。

(つづく)