はっちゃんZのブログ小説

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105.妖?行方不明者を探せ3

魔物 ?

悪い神様 ?

封印 ?

今まで幼い兄妹からの依頼で解決した事件で不思議な事はたまにはあったが

今回の依頼は今までとは次元の違い、いや相手にする世界の違いを感じた翔だった。

 

その魔物に対しての情報は遼真の方からもたらされた。

魔物の本体はまだ不明で現在調査中との話だが、

その魔物の始まりはわかった。

どうやら『蠱毒(こどく)』から生み出された魔物だったらしい。

蠱毒とは、古代中国で使われていたとされる呪術の一種で動物や虫などを使用する。

蜘、百足、蛇、蛙などの多くの動物や虫を同じ容器に入れ、互いに戦わせ共食いさせて、勝ち残ったものを神霊とするらしい。そしてこの生物の毒を採取して飲食物に混ぜると、人に害を加えることができ、思い通りに福を得ることもできると言われている。

もし本当にこの魔物がこの世に解き放たれていたら大変なことになると感じた。

 

遼真から『あやかみの祠』へ一緒に行って欲しいと言われて、

翔は翌日バイク二台で高尾山へと向かった。

絶好のハイキング日和で平日にも関わらず登山客がたくさん歩いている。

その一団が通り過ぎるのを待って、目撃者のいない時を見計らってから

参道の途中から道なき道へ入り、ひたすら『あやかみの祠』へ向かった。

しばらくすると鬱蒼とした大きな森が近づいてくる。

その森の上空だけはなぜか黒雲が留まっており、

何となく嫌な感じになり行きたくない様な気持ちにさせられている。

気のせいか漠然とした不安が湧いてきて、

なぜか気が滅入ってきてますます足の運びが遅くなる。

 

ここで遼真が一旦翔を立ち止まらせると翔に向かって、

何かを唱えながら『五芒星の印』を切っている。

最後に『ン』と手刀を切った瞬間、

かすかに『フワッ』とした何かが身体を包んだことを感じた。

「翔兄さん、今から結界の張っている場所へ入ります。

 今さっき兄さんも結界へ入ることができるように術を掛けました」

「結界?術?・・・うん・・・ありがとう」

「じゃあ行きましょう。僕の後について来て下さい」

 

遼真は森の中をまっすぐに進んでいく。

足元には大きな石や地面から出ている曲がりくねった根が歩くことを邪魔してくる。

身体には蚊や虻などが体温や二酸化炭素に誘われて寄って来る。

「兄さん、そろそろ結界ですから注意して下さい」

翔は『注意しろ』と言われてもどう注意していいのかわからなかったが

とりあえず手の平に乗るほどの大きさのナメクジやヒルを踏んで転げないように

足元をよく見て遼真についていった。

時々薄暗い前方を見ているが全然祠らしきものは見えなかった。

 

『チリッ』とした少し痛いような痒いような皮膚感覚が走った。

とたんにそれまで真っ暗で見えなかった森の中が明るくなった。

木々の間から穏やかな日差しが差し込んでいる。

野鳥の声が響き渡っている。

そこに『あやかみの祠』は存在した。

縦横1メートル、高さ1.5メートルの杉材で作られた苔蒸した古い祠であった。

傍らに鎮座される苔蒸したお地蔵様にはなぜか頭が無かった。

その折れ口を調べると真新しく最近に折られたものだった。

そしてその近くには大きな鏡が割れて捨てられている。

 

祠の扉へ貼られたお札は破られておりその扉の鍵も破られている。

遼真が呪文を唱えながらそっと扉を開けていく。

中には何も無く床にはポッカリと穴が開いていた。

その穴の底には落とされた床板と割られた石板以外何もなかった。

その石版の表面には何か模様らしきものが彫られている。

遼真はその割れた石板を大切にリュックサックへ入れていく。

祠の床板は綺麗に元へ戻していく。

そっと祠の扉を閉めると周りを丁寧に探し始めた。

近くの木の根元には古い壷の破片が散乱していた。

(つづく)