はっちゃんZのブログ小説

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35.美波、YOSAKOIへ出場2

いよいよ当日となった。

一番星が見えてくると舞台の照明の明るさが街を圧倒し始める。

小樽商科大学 翔楽舞』チームは、大通8丁目会場での演舞のため待機している。

この大通公園南北パレード会場は、全長500mの南北の目抜き通りを使ったパレードで、圧倒的な迫力とパレードならではの動きのある踊りが堪能できる。

また、両親が座っている大通公園8丁目会場に特設されているのは、緑溢れる公園の雰囲気を最大限に活かした開放的なステージであり、青空の下さわやかな新緑に囲まれたステージは北海道を舞台にした『YOSAKOIソーラン祭り』の象徴だった。

そのほか市内にある大型スーパー・ホームセンターの駐車場、観光スポットとしても有名な北海道庁赤れんが前広場やサッポロファクトリー、地域の人々に愛される商店街やその地域のメインストリートなど他の会場もバラエティ豊かなチームが踊っている。

『街が舞台に』の名の通り、至るところがステージとなっている。

 

チームは大通公園の芝生で踊りの最終調整に入っている。

美波は踊り用に普段はしない派手な化粧、きらびやか衣装をつけている。

友達の芳賀さんと二人で踊りながらドキドキしているようだ。

 

アナウンスが聞こえてくる。

次の演舞は『小樽商科大学 翔楽舞』によるものです。皆さん、拍手をお願いします』

美波は芳賀さんと顔を合わせると舞台へ飛び出した。

その瞬間、強く真っ白い光が目に飛び込んできた。

心臓がドキンとなった。

両親や可愛い弟妹が全く見えなくなっている。

とりあえず座っているであろう方向へ笑顔を向けた。

 

やがて曲が始まった。

自然に身体が動き始める。

クラブの後に部屋に戻っても必死で練習してきた成果が出て来ている。

リズムに合わせて全身が動く。

部員全員が息を合わせ一つの世界を作り上げていく。

全身を貫く大音響の中から仲間の激しい呼吸音が聞こえてくる。

みんなの額から汗が飛び散り、その躍動する楽しさが笑顔を運んでいる。

美波は一心不乱に踊り、最後に「ヤー」と踊りを決めて終わっていた。

この強烈な初めての体験は一生忘れることはできないと感じた瞬間だった。

 

慎一と静香は、美波の踊りを大いに喜んだ。

美波の輝くばかりの笑顔に釘付けだった。

家のテレビ番組は、ビデオ録画しているので後で見直すのが楽しみだった。

ただ雄樹と夏姫も最初はじっと見ていたが、待ち疲れていつの間にか眠っている。

美波のチームの演舞が終わると夫婦はそっと子供達を抱きかかえて家路へ着いた。

美波達は、この後「大通公園南北パレード会場」で演舞をするらしく、まだまだ夜は始まったばかりとのことだった。若さの特権だった。

(つづく)