はっちゃんZのブログ小説

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61. 逆恨み3

もう一本ナイフを出した男に向かって、

百合を心配そうにじっと見ていたミーアが飛び掛かった。

「うわあ、なんだ?この汚いノラ猫が」

『ガリッ』

ミーアが男の顔に爪を立てた。

「てめえ、いてえな」

男の大きな手に掴まれた小さな身体は壁に思い切り打ちつけられた。

『ドン、ベチャ、ミギャー』

 

「ミーア」

百合が大声で叫んでもミーアは起きてこない。

「このクソ猫が爪を立てやがって、ほーらよ」

思い切りミーアを蹴り上げる男。

ボールのように壁に叩きつけられるミーアの小さな身体。

「おいおい、俺を助けてくれよ」

「これはやばいな。今回、俺は抜けさせてもらうぜ。じゃあな」

後から来た男が部屋から逃げて行ったため

急いで百合の縄を解いて隣の部屋へ避難させた。

 

翔は部屋の前に立ち、男達から百合を守っている。

悶絶している男がいつ目を覚ますかわからないし、

ボールペンを付きたてた男はまだ拳銃を取ろうと視線が向いている。

男はボールペンを抜いて腕を自由にすると

痛みと怒りに奮えながらもう一本ナイフを出そうとしている。

翔はすっと移動するとその手へ蹴りを入れた。

「うっ、痛ってえ」

男の胸にナイフが突き立っていた。

 

翔の意識が悶絶している男から逸れた一瞬

「くそー、こうなれば女を道連れにしてやる」

気絶したふりをしていた悶絶した男は、

その瞬間に百合のいる部屋に入った。

翔は一瞬、腕に突き立てているナイフをその男の太ももへ投げつけた。

ナイフは見事に太腿に深々と突き立った。

「ぎゃあ、痛ってえ」

男はその場に倒れるがとジリジリと百合へ向かって行く。

「くそ、くそ、絶対に許さねえ」

男の手が百合を襲おうとしたその時、

百合がその勢いを利用してその男を翔の方へ投げ飛ばした。

 

男はなぜ投げられたか理解できないように驚いた顔をしてよろよろ立ち上がった。

当然、翔は正面に立つと顎への上段蹴りを入れた。

吹っ飛び崩れ落ちた男を近くにあったコードで縛った。

次に

胸にナイフを突き立った痛みで転がって暴れている男に近寄ると

側頭部へ蹴りを入れて昏睡させた。

そして警部へ連絡して逃げた男の情報を伝え、男達を逮捕してもらった。

百合は急いで、倒れているミーアを抱きしめている。

警察の現場検証の結果、

隣の部屋から笑気ガスのホースが天井板を少しずらした穴につながれていた。

百合の両親が警備の厳重なマンションを借りている意味を知った。

こんな部屋にもう二度と百合を来させてはいけないと感じた翔だった。

(つづく)