はっちゃんZのブログ小説

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75.遺族の恨みは晴れるのか1

いつもながら目を覆うような事件やニュースが毎日のように報道されている。

一人ひとりがいつ我が身になるのかわからない時代だった。

この日本という国では、自殺者は年間3万人と言われており、

それに隠れるように毎年8万人以上の規模で行方不明の人間がいること。

その上毎年多くの人間が事故や犯罪で死亡している。

 

そんな中で最近特に目を引いた事件は、

被害者が裁判官や弁護士の関係者への殺人事件、行方不明事件や自死事件である。

裁判官や弁護士の関係者、特に妻や子供が行方を絶ち、

身代金の要求もなく死体になって発見されるか、今もなお行方不明のままとなっている。

もしかすると自死となっているが本当は異なるケースがあるのかもしれない。

被害者が殺害された時も目撃者は一切居らず、首吊り、身投げ、自動車での轢死などであった。

犯人は捕まっておらず迷宮入りの可能性が高い状況である。                         

たまに犯人が逮捕されているケースもあるが、

「誰でもいいから殺してみたかった。

   私の心の悪魔が囁いてきました」と発言している。

彼らは『心神喪失状態』として裁判を争っており、

最終的には死刑ではなく、

心神喪失者等医療観察法』に従い医療機関に入れられている。

 

そしてもう一つ気になる事実にも気がついた。

毎年発生する多くの行方不明者の中には、

凶悪な犯罪を起こしたが、明らかに本人が起こした犯罪にも関わらず

裁判において証拠不十分だったり、心神喪失状態だったとして

死刑を逃れた犯罪者、無事刑期を終えて出所してきた元犯罪者も含まれていることだった。

 

そんな時、都倉警部が事務所に顔を出して、内密にその事件への調査依頼があった。

『日本の治安維持ために何とかして欲しい』と依頼された。

まず現在被害者になっている裁判官や弁護士の過去の裁判について調査した。

共通点として、

裁判官の傾向として、

どのような残虐非道な殺人者であっても死刑を回避する傾向があった。

昨今、裁判員制度が始まり、裁判員の判断が死刑という結果になっても

その裁判官の判断は死刑とはならなかった。

弁護士においては、

過去から『人権派』と呼ばれ、

どのような猟奇殺人者であっても、『心神喪失状態』を理由に

無罪を主張し死刑にはさせなかった。

逆にそれが彼らのセールスポイントであることは会見内容からでも明らかであった。

(つづく)

30.美瑛と富良野1

北海道はこの時期になると街中が華やかになる。

大通公園はもとよりベランダの花壇も今が盛りと咲き誇る。

昨年は静香が身重だったので控えていたが、旭川富良野へのドライブを計画した。

それを聞きつけて美波がきている。

自宅のマンションから石山通へ出て南下し、南8西11丁目の交差点を左折し、

中島公園の通過し豊平川に架かる南大橋を渡り、川沿いの道を通過し、

次の交差点を左折、道なりに南七条米里通を走る。

やがて札幌JCTが目に入るので、道央自動車道へ進む。

車窓に映る岩見沢美唄の街並みにはまだ桜色が混じっている。

道央道からの景色は北海道らしい広い台地がはるか先の地平線まで続いている。

2時間ほど高速走行していると旭川鷹栖ICが見えてくる。

そこで下りて旭川市内を抜け1時間ほど走ると最初の目的地である美瑛へ到着する。

さっそく最近人気が出ている『青い池』へ向かう。

この場所は同僚から聞いた時からずっと来たかった場所だった。

連休中のため駐車場も満車状態で

海外からの人も観光バスで乗りつけている。

 

ネットには以下のように記載されている。

元々は昭和63年に噴火した十勝岳火山泥流災害を防止する為に、美瑛川に作られた堰堤でした。その防災工事の生産過程による副産物として、複数の人造池の一つにしか過ぎない存在でもありました。

美瑛川に岩肌をつたって流れ落ちていく「白ひげの滝(しろひげのたき)」。白金温泉上流の十勝岳が源流になっていて、山が吸い込んだ水分が時をかけて地下水となって崖の途中からアルミニウムがまざった状態で美瑛川に注ぎ込まれます。

そこで硫黄沢川との合流時に目には見えないコロイド状の粒子が生まれ、太陽の力と光の散乱を補う硫黄や石灰成分などが、川底の石や岩を白くして青い池が美瑛に誕生したようです。少しでも風で水面が揺れるだけで見た目が変わる繊細な池ですので、条件を全てクリアした時の美しさは息を呑むほど。

また美瑛川は別名「ブルーリバー」と呼ばれているようで、滝の下周辺から色を変え始め、青い池のように深く青い川を見ることができます。

 

『青い池』

初めて目にしたその神秘的な青さ、

コバルトブルーより青いその色合いに、一瞬息を飲み、目を奪われた。

その青い水面下には白樺などの枯れた幹が白く光っている。

雲の影が掛かると水面が深い青へと変り、風が吹き細波が立つと白く変る。

子供達のベビーカーを押しながら歩くと、

見る角度によってもその色合いは変化している。

これほど美しい池があまり知られていなかったことが信じられない気持ちだった。

 

車窓を流れる美瑛の自然、

『パッチワークの丘』

マイルドセブンの丘』

『セブンスターの木』

『ケンとメリーの木』など有名な観光場所を満喫した。

それらを後にして南下すると富良野の標識が見えてくる。

富良野フラワーロード」の始まりだった。

そのロード途中に『サンタのヒゲ』の幟が上がっている。

まずは最近有名になってきている富良野スウィーツの

メロン専門店ポプラファームで食べることとした。

『サンタのヒゲ』

ネットでは以下記載がある。

甘く熟した赤肉の富良野メロンの半切りの上に、濃厚で後味がさっぱりとしたミルクソフトクリームが乗っている豪快な一品。「世界にひとつだけ」「ここだけの味」を、富良野に訪れる人に提供したいという思いから生まれた「サンタのヒゲ」。

名付け親は小学生だった娘さんで、彼女が「ひっくり返すとサンタクロースのひげみたい」という言葉をきっかけに 「サンタのヒゲ」と名付けられた。

その上、「サンタのヒゲ」には色々なバリエーションがあって、 「サンタデミックス」は、メロンの上に乗っているソフトクリームが、バニラとメロンのミックスソフトになっている。男性客に人気の、ソフトクリームにあずきがかかっている「サンタのへそ」や、子供に人気のソフトクリームにチョコレートがたっぷりかかっている「ゴジラのヒゲ」がある。

 

5人は定番の『サンタのヒゲ』と『サンタデミックス』を1個ずつ注文した。

北海道の肥沃な大地が育てた深い甘さの富良野メロン、

広大な大地でストレスなく育った牛の牛乳を存分に使った

濃い脂肪分を含む深いながら口当たりがさっぱりしたソフトクリーム、

冷たく滑らかなクリームの中で

軽く噛むだけでほぐれるように溶けてゆく熟したメロンの果肉が舌に優しかった。

これぞメロン、これぞソフトクリームという逸品であった。

家族全員が笑顔になって静かに味わう時間となった。

小さな子供たちは口の周りをクリームで真っ白にしながら頬張っている。

(つづく)

74.痴漢冤罪ビジネスの闇を照らせ9

翔は、同じフロアを各部屋の調査に入った。

フロアの一角に女の子の休憩室と法律系詐欺用員の部屋が用意されている。

壁には、本日の出動場所が掲示されている。

彼らの会話から犯罪の概要が明らかになってきた。

 

この痴漢冤罪事件のあらましは以下である。

女子高校生3名が1組で構成されており、

痴漢され係、証人係、道具係(痴漢され係の体液などの付いたものを用意している)だった。

また、同時に動く人間として弁護士の名刺を持った人間が現場近くに待機している。

事件があった時間に偶然近くにいた風を装って、

痴漢被害者の弁護士として契約し、加害者に示談に持ち込む係である。

弁護士として会社に乗り込むと言えば、大体はその場で示談に応じて終わりとなる。

仮に裁判沙汰になっても100%有罪になるので心配はない。

 

翔は都倉警部へA班出動場所を知らせ、逮捕計画を打ち合わせた。

当日、A班を大きく取り囲むように私服刑事を配置し、彼らを一網打尽にした。

それと同時に、この神田の事務所へ踏み込み証拠物を押収した。

翔が調査した隠し部屋や金庫も全て開けさせて警察は全ての証拠を押さえた。

このグループが過去冤罪にした男性全てを明らかにさせてその事実を世間に公表した。

その結果として、

痴漢の冤罪の証明を依頼されたクライアントの愛野さんは疑いが晴れて大喜びだった。

冤罪作りに協力していた女子高生は、

暴力団員からの恫喝により行われていたことと少年法のため逮捕はされなかった。

実際に彼女達は喜んでしていたとの情報はあるが立証は難しかった。

しかし、ことがことだけに結果として彼女達は退学となり高校から放逐された。

またVRの風俗店内では性行為は行われていないため違法ではなかったが、

男性へ派遣する女性の中に18歳以下の女子高生もいたため

児童福祉法違反の疑いで摘発された。

 

V班とA班の名称についてよくよく考えてみると

風俗グループがV班。Virtual Reality仮想現実で、

接点も何もない空間において相手に擬似恋愛又は性交などをさせる。

痴漢冤罪グループがA班。Augmented Reality拡張現実で、

現実世界には起こっていない犯罪を追加し、

痴漢状況を発生させ相手をその世界へ追い込む。

別名のF班は、fraud(詐欺)の意味であった。

 

これらから今後の犯罪傾向が想像もつかない世界になりそうで翔は恐ろしく感じた。

しかし、これで一般市民へ被害が及ぶと予想される

アジアの犯罪組織とも親交の深い東京最大の暴力団外道組の後継組織の

大きな資金源を壊滅させたことは確かだった。

(つづく)

29.端午の節句(初節句)

いよいよ初節句の日を迎えた。

庭がないので和室の柱に小さめのこいのぼりと床の間に五月人形を飾った。

主役の雄樹へ袴羽織を着せた。

雄樹はまだまだ小さい割にしっかりと立ち始めている。

 

雄樹はそれらに興味があるのか、

こいのぼりを見上げたり、

人形の方をじっと見て、そっとさわるを繰り返している。

静香は張り切って初節句の料理を作っている。

夏姫と雄樹は美波が面倒を見ている。

慎一はその様子をビデオ撮影している。

後の編集が楽しみだった。

 

やがて料理が出来た。

「鯛の焼物」

「赤飯とちらし寿司」

「筍、海老、蓮根の煮付け」

「鰹(かつお)と鰤(ぶり)の刺身」

「柏餅、チマキ」

 

家族全員が和室に集まり、

テーブルの上にところ狭しと並べられた料理に舌鼓を打った。

とりあえずテレビでビデオを全て上映した。

静香も美波もみんな、見入っている。

一人雄樹だけ食事に夢中だった。

食欲は夏姫よりも旺盛でさすが男の子の面目躍如だった。

(つづく)

73.痴漢冤罪ビジネスの闇を照らせ8

「それはそうとボス、

 最近痴漢をした男がその場から逃げ始めているってニュースになってますね」

「ああ、それで困ってる。銭になりゃあしねえ」

「そうですか。困ったものですね」

「せっかく、示談に持っていってお金にするところなのに最近は空振りが多い。

 電車の中でも両手をずっと上げて、

 イヤフォン掛けて目を瞑っている野郎ばかりになって

 商売あがったりだ。

 ネット上でも男専用車両を作れと言い始めているしそろそろかなあ」

「そんなに商売になるものなんですか?」

「ああ、駅員室に連れて行かれて警察官に渡されたら、即100%痴漢で捕まる」

「否認しても駄目なんですか?」

「ああ、逃げない限り絶対有罪にされる。

 特に女が泣き始めたら即逮捕されるね。駅員も警察官も女の涙を信じるね」

「怖え、俺、絶対に満員電車に乗るの辞めます」

「それがいい。

 痴漢で捕まった奴らは会社にばれるとクビになるから捕まったら必ず示談に応じる。

 取りっぱぐれのない仕事さ。それが」

「その場から逃げる奴が増えて取れない」

「それで困ってる。女達からも『金にならない』と文句が出てきてる」

「うーん、逃げる奴ら、敵ながらうまいと言おうか、餌の癖に生意気と言おうか」

「おいおい、誉めるんじゃねえ」

「いえ、そんなことを言ってません。すみません。許して下さい」

「いや、俺も本音はそうさ。確かにそろそろ潮時かと考えてる」

「確かに芸能人でも嘘の痴漢で逮捕させたって自慢している馬鹿もいたくらいでした

 から、それほど長い間儲けられるものではないのかもしれませんね」

「まあ、詐欺だからなあ。そろそろ当局が動くかもしれねえな」

まだ二人の会話は続いているが、これ以上のものは聞けなかった。

(つづく)

72.痴漢冤罪ビジネスの闇を照らせ7

ニュー倉持組事務所フロアーに相当する事務所の窓ガラスには

『痴漢犯罪専門法 NKG法律事務所』の文字が広告されている。

「失礼します。ボス、これが今日のあがりです」

「おう、ご苦労だったな。どうだ?順調か?」

「へい、馬鹿なガキと馬鹿な男のおかげで順調です」

「それならいい。もう一軒の人形の店も盛況みたいだ」

「それは良かった。でも不思議ですよねえ。

 テツとも話していたんですが、俺は生身がいいですけどねえ」

「聞いた話だと、

 最近アニメオタクが増えて生身の大人の女が苦手な男が増えたのと、

 AVビデオの普及で自分じゃ何もできない男が増えたのさ」

「ふーん、そんなものですかねえ」

「そいつらの話では生身の女は面倒臭いらしいぜ。

 そこは嫌とか、ここがいいとか、もっと長くとか、注文が多くて嫌になるらしいぜ」

「その注文に応えてやれば、いい声だすのにねえ」

「そこが邪魔臭いらしいぜ。要するに自分勝手な男と女が増えたということかなあ」

「それで、その注文に応える男がホストということですかい?」

「そう女も仕事や金を持ち始めると、言う事を聞く男を欲しがるんだろうなあ。

 ホストに聞くとそういう女は相当に注文が多く、辟易しているみたいだぜ。

 女にも不満があるようでいずれホストも要らなくなるかもしれねえなあ」

「じゃあ女専用の店も将来は考えた方がいいですね」

「ああ、その店は男のアンドロイドを揃えて

 全ての注文を聞けるようなものが必要だな。

 それに女は結構用心深いし、細かくて文句も多いから、

 店の表に生身の男は出せない。

 そんな店は女ばかりで運営させないと面倒なことになるから準備がいる」

「そんな女、たくさんいますかねえ」

「ああ、だから、ほれ、Aの方で準備中だ」

「あっ、それで。ボスは頭いいですねえ」

「そこは俺の兄弟分の大陸の、何千年も歴史のある国の、スケベの塊の・・・。

 そこのツテでロボット技術を導入して・・・と言う話かなあ」

「ああ、そこまで発達してますかねえ」

「日本のスーパーコンピュータより速いものを作ってる国だぜ。

 それにあの国は独身男ばかりで軍隊内にも

 それ専用のロボットを置いとかないと暴発するって言う話だぜ。

 うちの店のロボットは全て日本の職人製だから質も金額も違うが

 もうじき輸出用に少し精巧なものを作るように指示が来ている。

 宇宙基地での使用を考えているらしいぜ」

「宇宙?そりゃあ、夢みたいな話だ」

「いや、夢ではなく、兵士も人間離れした奴、

 いや元人間の化け物みたいな兵士を作っているそうだぜ」

「日本は大丈夫ですかねえ。そんな兵士が攻めてきたら」

「さあな、われわれは、今のところは奴らの子分になってるから殺されねえよ」

「ええ?子分?なんか嫌だなあ」

「馬鹿野郎、今は、と、言ってるだろ?

 奴らの首根っこ押さえたら反撃さ。奴らは利用するだけさ」

「ならいいですが、奴らは心底日本人を嫌ってるから怖くて」

「そりゃあ、アジアの獅子とか言ってふんぞり返っていた時、

 たくさんの外国の軍隊に攻められてボコボコにされて、

 挙句に格下と見ていた日本にも攻められて負けて、

 属国だった国や島を無理矢理に独立させられて、

 最後には領地を植民地として取られたんだから憎むだろう」

「なぜ、日本だけなんすかねえ」

「そりゃあ、奴らから見て格下と見えるのは日本だけだからさ」

「他の国は格上だ、と言う事ですかねえ」

「というより怖いのじゃないか。

 本当は自分達が一番情けないんだけどそれを認められない。

 だから格下の日本を嫌うということだろうなあ。

 実のところ、本当は、日本人も怖がられているぜ」

「日本人が怖い?こんなだらけた国民が?」

「日本人の団結力の強さを知ってるからだろうなあ。

 奴らはお互いを信用していない、協力し合えない人間の集まりだから」

「それだったら戦争できないのじゃないですか?」

「そうだよ。武器は向こうが強くても軍隊となれば日本は強い。奴らは弱い。

 だから、命知らずの命令を聞くロボット兵士が期待されているというところだ」

A班情報以外にも多くの不穏な情報が入手できた翔だった。

(つづく)

71.痴漢冤罪ビジネスの闇を照らせ6

店の近隣駐車場へバトルカーを待機させ、

夜中にはドローンを飛ばしX線撮影にて建物情報を調査した。

隠し部屋らしき怪しいところは見つからなかった。

クモママから派遣したクモ助の聞き耳タマゴからは

対象が女子高生であったため深い情報は取れなかった。

更なる情報を求め、

クモママを事務所裏口の真上にある換気口へ移動させ、

いつでも出入する者に貼り付けるようにクモ助を待機させることとした。

事務所内に待機しているクモ大助との連携を取るつもりだった。

 

「それはそうとあっちの方、A班・・・は順調なのですか?」

「あまり詳しくは知らないけどそうなんじゃないか?

 でも最近、線路に逃げる奴が増えてきているようだよなあ」

「それと何か関係あるのですか?」

「よくわからないが、逃げられたら売上げにならないと

 ニュース見たボスが独りごと言ってたなあ」

「ふーん、あまりわからないけど。売上げにならないと

 またいろいろとこっちに言ってきますねえ」

「そうだろうなあ。

 でもこちらは生身の女と縁のない寂しい男からコツコツと釣ってるだけだから」

「しかし、不思議な機械ですよねえ。全く原理がわからない」

「まあ、物理の天才の生身嫌いの学生の発明だけど。

 あれと天才は紙一重というのは本当だな」

「そうですね。生身を目の前にして、

 あの機械でしてもらうのが好きってんだから、本当に変な奴ですよねえ。」

「あの機械試してみたけど、不思議だった。本当にしてるみたいだったぜ」

「そうなんですか」

「ああ、あそこがきゅっと締め付けられて、こう動くんだ。

 最後には思わず出てしまったぜ」

「へえ、そりゃあ不思議ですねえ」

「まあ、あの箱の中にセクサロイドと同じ物が入っているらしいけど・・・」

「だけど、あの触られる感触は・・・逆に怖いですねえ」

「もう何でもありの世界になりつつあるのかねえ。でもやはり俺は生身が好きだなあ」

「俺もです。でもへたな女よりはうちの機械が勝ってるような気がしますがねえ」

「そうだろうな。だから毎日毎日これだけの客がくるのだろうなあ」

「お陰でボスに喜ばれるということですね」

「そうだな」

「それはそうと、今日は組に顔を出す日ではないですか?」

「そうだった。ちょっとお金の準備してくる」

「へい、お気をつけて」

 

男は神田駅前にある古いビルへと入っていく。

どうやら3階のフロア全体を借りているようだ。

早速クモ大助をビル壁面の換気口、

クモママをビルの出入口上部の換気口へ待機させ調査を開始した。

(つづく)

70.痴漢冤罪ビジネスの闇を照らせ5

Ryokoからの連絡がスマホへ入ってきた。

小部屋付近は静かになったようだ。

仕事終わりにはゴミ箱内の清掃があると考えて、

アスカがタイミングを見計らって

クモママとクモ大助をテーブルの裏へすでに移動させている。

翔は慎重にクモママとクモ大助を各自の持ち場へと移動させていった。

 

事務所やスタッフルームは店に入った時に確認している。

クモママはスタッフルーム(女の子部屋)の家具の裏へ待機させ、

クモ大助は事務所にある額縁の裏へ移動させた。

これから連日情報収集に入った。

 

スタッフルーム(女の子部屋)情報をまとめると

①この店に雇われている女の子は概ね二つのグループに分けられている。

②仕事の種類は2種類の仕事であり、「V担当」と『A担当(別名F担当)』と呼ばれている。

③業務で手取りがいいのは『A担当(別名F担当)』である。

④V担当者業務の詳細

・時間がくると専用小部屋へ行き、大きなカメラの前で待機する。

 ・ご奉仕コース:目の前に置かれている箱の中に映る男性の局部(画像)を手で

         触る。客へは顔だけがアップされている。

・お口コース :目の前に置かれている男性の局部の模型を舐めたり含んだりする。

        模型根元に設置されたレンズからのカメラ目線が客へ写される。

・爆射コース :ベッドが設置されており、腰から上が客へ映る。

        大人のおもちゃ(女性用、コード付、ただし小型)を使う。

        男性の挿入要望に合わせて、自ら挿入し感じる演技をする。

        性体験未経験者の場合、横になった腹部へ男性用大人のおもちゃを

        置き、局部のおもちゃを出し入れする。(レンズには映らない)

        挿入時の演技力などが必要で定期的に指導教育がある。

⑤機械の構造は不明で『壊したら殺す』と言われており怖がっている。

⑥バイト代は毎日受け取り、またはまとめて受け取りかを選ぶことができる。

⑦女の子の会話で由紀菜から『同級生のチカちゃん』(佐渡千佳?)の名前が出て

 おり、由紀菜と同じ学校でこのアルバイトを紹介されている。

⑧『同級生のチカちゃん』はA班でアルバイトをしている。

 A班の部屋はこのビルとは異なる場所にあって教えてもらっていない。

 

事務所からの情報は

①店としての1日の稼ぎは目標が500万円である。

②上納金は毎月5000万円、倉持組残党のニュー倉持組(神田)へ届けている。

③店としてAV女優や風俗嬢への斡旋もしている。

④VR機器の技師は『ソメヤ』という都内の大学生。覚醒剤で薬籠中にしている。

 初心なふりした女子高生をたまにあてがうだけで満足している。

⑤姉妹店として「セクサドール専門店」も経営している。

⑥A班は、詐欺グループが絡んでいるようだが、詳細は店の上層部しか知らない。

 まだ色々と情報は取れたが、どうも最後の詐欺グループ情報が気になった。

 

今回は、都内マンションに住む大学生『ソメヤ』の部屋へ

今日がアルバイト最終日となった由紀菜が派遣される。

彼女の外出着の襟に聞き耳タマゴを挿入し、場所の割り出しと情報聴取を開始した。

由紀菜のアルバイトの目的が、

苦労掛けてきた母親の誕生日のプレゼントの購入であることがわかっている。

普段仕事が忙しく、あまり話ができない母親へ

サプライズで喜ばせたいと考えているのだった。

 

『ソメヤ』と言う男が、生身には全く興味が無いことがわかっているため

由紀菜の身に危害が及ぶことは考えられなかった。

彼女が部屋から出てくるであろう時間にクライアントに連絡し待った。

少し疲れたようにマンションから出てきた彼女は

お母さんを見つけて最初は驚いていたが、

「ママ、どうして、ここに?」

「おかえり、由紀菜、心配したのよ」

母親の笑顔を見て安心したのか、屈託のない笑顔で母親へ近寄ってきた。

「由紀菜、良かった、あなたが無事で」

「ママ、ごめんなさい。アルバイトは今日が最後だったの」

「ならいいわ、さあ帰りましょう」

そして母娘二人で並んで仲良く家へ帰って行った。

翔は後日、由紀菜へ、

もうあのようなアルバイトは辞めるように

風俗店の機器そのものは違法でないが、

由紀菜や家族の身に危害が及ぶ可能性があることを考えて

他言は無用と伝えて近寄らないことを誓わせた。

(つづく)

69.痴漢冤罪ビジネスの闇を照らせ4

 

監視メガネからの映像をRyokoへ送っているので

後で解析していくつもりだった。

でも、もしこの時間まで事務所に百合がいたら・・・

と思うと気が気でなかった。

いくら仕事だからと言っても、

この店の客ではお嬢様の百合には理解し難くあまりいい気はしないと感じたからだ。

事務所に戻ると百合はすでに最上階の部屋に帰っているようだった。

店の営業時間は26時までなのでまだ時間があった。

今の時間は客がいるため部屋で

クモママやクモ大助を移動させるのは無理だった。

一度部屋へ戻って待機することとし、Ryokoへデータ解析を指示した。

 

部屋ではちょうど百合がご飯を作っていた。

「ただいま」

「あらっ?翔さん、早かったわね」

「お腹空いた」

「はいはい、どうぞ、今出来たわよ」

「おっ、この分厚いトンテキ!おいしそう」

「ええ、今日は偶然TOKYO X(東京エックス)が手に入ったの」

「へえ、テレビしか聞いたことない。百合、早く一緒に食べようよ」

「はい、それはそうと翔さん、今日はどうだったの?」

「うん?まあそれはご飯の後で」

「そうね、変な店だから何かあったらと心配だったの」

「えっ?知ってたの?」

「知ってたわよ、翔さんも大変ねと思って」

「怒らないの?」

「いいえ、なぜ?お仕事なのに・・・」

「うん、そう、変な店で困ったよ。でも準備はできたよ」

「なら良かったわ。そんな店、もう行かなくて済むならそれが一番」

「そうだね、良かった。じゃあ、いただきます」

「じゃあ、いただきます」

 

TOKYO Xは、ちまたの話題となっている東京都で開発生産されている豚肉で、3つの品種(北京黒豚、イギリス系黒豚、デュロック種) を交配させて改良した新しい品種の豚で、上質の赤身と脂肪がほどよく混ざった肉質が特徴とチラシには記載されている。

 

食後はコーヒーを飲みながら、

テレビをつけて二人でゆったりと過ごした。

夕方に精神力で局部を元気にさせたと言えども、

変に刺激されて少し身体が活性化している。

大好きな百合を目の前にすると、

ついつい安心してしまい抑え難くなって抱きしめていた。

「ねえ翔、私のこと考えて、お店では我慢してたのね。

 大丈夫よ、私はそんな事でヤキモチは焼かないわ」

「そうなの?」

「ええ、一応は男性の生理について知っているつもり。ふふふ」

「でも俺は百合じゃないと嫌だもん。百合、大好き」

「翔、私もよ。ここは明るいからお部屋で・・・」

「いいの?」

「ふふ、いいわよ、翔ったら、甘えん坊さんになる時はいつもそう」

「へへへ、だって百合は可愛いし素敵だし、いい匂いなんだもん」

「ああ、翔・・・もう・・・あん・・・好き・・・」

そんなこんなで百合と愛し合い、夜中まで軽く眠った。

(つづく)

28.支笏湖と三大秘湖のオコタンペ湖2

すれ違う車もないまま、看板に従ってなだらかな下り坂を走らせる。

やがて「丸駒温泉」が見えた。

支笏湖に面する割合に大きな旅館で車も結構止まっている。

キャンプ場駐車へ車を停めて、子供達をベビーカーに乗せて、

家族用テントを出して、お弁当を肩にかけて湖岸へ向かった。

 

目の前に静かな湖面が広がり、対岸に「樽前山・風不死山」が鎮座している。

湖面を渡る風が止むと「樽前山・風不死山」の姿が逆さに映っている。

自分達以外は誰もいないので一切物音もせず、静かな風景がそこにはあった。

子供達は、たまに吹く風が気持ち良いのか空を見てにこやかにしている。

急いで家庭用テントを組み立てて、ベビーカーを交代した。

妻がお弁当を広げて昼食の用意が終わったらテントの中へ子供達を入れた。

 

子供達へ食べさせるのは夫婦交代で、慌しく慎一が先に食べると妻と交代した。

子供達は離乳食で色々な味を覚えてたくさん食べ始めている。

大人のものも食べようとするが何とかなだめて離乳食を全部食べさせた。

子供達もお腹が一杯になり、遊び始めたので芝生のところへ連れて行った。

雄樹は父の背中を使って、つかまり立ちを始めている。

夏姫は父の膝が気持ちいいのか、ずっと座って母や兄を見ている。

妻が作ってきたコーヒーを入れた。

夫婦は子供達と鳥の声だけがこだまする静かな湖岸で馥郁たるコーヒーを楽しんだ。

いつの間にか母の膝に座っている雄樹が夏姫と何かを話している。

 

やや太陽が傾いてきて少し空気が冷たくなってきたので急いでテントなどを片付けた。

帰り道に偶然、『オコタンペ湖』の標識を見つけた。

なんと来た時は、標識が高い雪壁の上にあったので気がつかなかったのだ。

そこで車から降りて、

道路際にある展望台の雪壁の切れ間から覗いてみると、

ブログで見た湖面の色は全く見えず、

まだ雪に閉ざされたままの真っ白な湖面だった。

 

オコタンぺ湖は、火山噴出物によって堰き止められた湖で、

晴れるとコバルトブルー色になり、

その湖面に秋の紅葉が映ると、とてもきれいとの情報があった。

ただ湖付近は立ち入り禁止となっているため、

道路脇の展望台から眺めるようになっている。

次回に期待ということで札幌市への道を戻った。

(つづく)

68.痴漢冤罪ビジネスの闇を照らせ3

大きな画面に化粧された『ユキ』の顔が真正面から映っている。

ユキの背景には、ぬいぐるみとか並んでおり自宅の部屋のような光景が映っている。

「ユキです。ご指名頂き今日はありがとうございます。

 今日、ユキは学校で少し悪い事をしました。

 あなたへご奉仕することで許して頂こうと思ってます。

 いいですか?お名前教えてください」

「・・・」

「お返事してくれないとあなたへご奉仕できません」

「は、はい、この店が初めてなもので・・・ごめんなさい。ケンイチといいます」

「ははは、かわいい。ケンイチさん、私の初恋の人と同じ名前だ。

 きっと素敵な男性なのだろうなあ。

 あなたの言うとおりにしますから何でも言ってね」

「は、はい、ユキちゃんは本当に女子高校生?」

「みんな、聞いてくるから見せるけど内緒よ、はい、これが在学証明書だよ」

画面には2017年4月1日発行のカードで、

高校名が黒く塗られて幼い顔つきの女子高生が写っている。

そういう話をしながら部屋の監視用カメラの位置を確認し、

見えないようにバッグからクモ助を仕込んだクモママとクモ大助を出動させ

小部屋の隅のゴミ箱の陰に待機させた。

 

ここまで来たら帰ってもいいのだが、

怪しまれてもいけないので最後まで付き合うこととした。

「ケンイチさん、私のこと、嫌い?

 何も話さなくなるから不安になっちゃう」

「ごめんなさい。あまりに可愛いから驚いて固まってた」

「ははは、ありがとう、そんなこと言われたの初めて。

 ねえ、ケンイチさん、ケンちゃんって言っていい?

 早く御奉仕したいから準備して貰っていい?」

「は、はい、わかりました」

「ははは、そんなにていねいに話されたら、

 ユキが恥ずかしくなっちゃう。

 ユキ、早くしようよとか、言ってよ」

「はい、では・・・ユキ、早くしようよ」

「はーい、ああ、男の人ってこんなになってるのね。こわーい」

「怖くないよ」

「そうそう、そんな風に話してもらうのが好き。

 わたし男の子のこと知らないの。これでいいのかなあ?」

 

その瞬間、コードの付いている箱に入れている局部に触られる感触が広がった。

箱の中には何もないはずだが、そっと局部を握っている感触が伝わってくる。

これは驚くべき技術だった。

「じゃあ、そっと動かすね。痛かったら言ってね。

 すごく硬くなってる。これでいい?気持ちいい?」

 局部を握られて上下に動かされている感触が伝わってくる。

「うん、気持ちいい」

「そう言ってくれるとうれしい。終わる時は言ってね」

「うん、・・・もう出る・・・」

「あら?ふふふ、かわいい。好き。

 もう少し時間あるからもう一度しちゃう?」

「ううん、もういいよ」

「そう、残念、もっとしていたかったのに。じゃあ、時間まで話さない?」

「ううん、もういいや。ありがとう」

「そう、じゃあ、また私を指名してね。ケンちゃん」

翔は、急いで支払いをして事務所に戻った。

(つづく)

27.支笏湖と三大秘湖のオコタンペ湖1

札幌の街なかの根雪もなくなりしばらくした4月の終わり、

風はまだ冷たいが暖かい日差しが窓から差し込んできている。

早いもので札幌へ来て、もう一年が経ったことに慎一は気がついた。

子供達も少しの風邪くらいのもので大きな病気もせずにすくすくと育っている。

久々に5月の連休を使って、ドライブをしようと考えた。

札幌の近くで子供達を遊ばせて、大人たちも満足する場所を探した。

ネットで調べていると何気にブログの「三大秘湖」という言葉を見つけた。

 

北海道三大秘湖・・・その神秘な響きに惹かれた。

「オコタンぺ湖」支笏湖近く

「東雲湖」然別湖近く

オンネトー湖」阿寒湖近く 

の三つの湖らしい。

写真では湖面がコバルトブルーやエメラルドグリーンに染まった湖が写っている。

 

今回は、まず千歳市支笏湖へ行き、帰り道に「オコタンぺ湖」へ行く事とした。

車に小さな家庭用テントとお弁当(離乳食も)とミルクやコーヒーなどを積んで出発した。

道央自動車道大谷地ICから千歳ICまで移動し、支笏湖通(16号)に入る。

高速道路から見る北海道の大地は、大きい平野部にポツンと山がそそり立っている。

北海道内を自家用車でドライブするのは今回が初めてだが、

仕事で移動している途中、本州とは異なるその風景を見て

不思議な感覚にとらわれたものだった。

札幌市からほんの1時間程度で支笏湖には到着する。

支笏湖温泉の看板の方へ向かうと真っ青な湖面を背景に小さな街並みが見えてくる。

まだ風も冷たいが白鳥型のペダルボートの多くが湖岸を遊泳している。

4人は青い湖面の左右にたたずむ、

樽前山・風不死山(左側)と恵庭岳(右側)を交互に見た。

どの山も特徴のある形をしており、やはり本州とは異なる大きさと形であった。

色々なお店が出ているが、名産品は支笏湖で養殖しているヒメマスの料理だった。

 

この湖は日本2番目に大きいカルデラ湖で「日本最北の不凍湖」と呼ばれている。

水中遊覧船出航のアナウンスがあり、湖上への遊覧が開始された。

この船は水面下2mの水中窓から透明度の高いコバルトブルーの世界が広がっている。

おだやかな砂地の波紋の上を泳ぐ多くの淡水魚の群れや

「柱状節理(ちゅうじょうせつり)」と呼ばれる

湖底から切り立った岩が崖のようになっている風景が広がっている。

アナウンスではカルデラ湖が出来上がる時、

マグマが急激に冷やされ収縮した際にできた地形で、

支笏湖における自然の造形美の一つらしい。

 

ミルクで子供達の喉の渇きを抑えての休憩後、

支笏湖東北岸に沿って北上し、恵庭岳を周回し突き当りを左折し支笏湖へ向かい、

キャンプ場のある「丸駒温泉」を目指した。

そこなら子供達を芝生に座らせて遊ばせながら、

安心して夫婦でコーヒーを飲めるからだった。

そこへ向かう道路の両側は、3から5メートルくらいの雪壁がずっと並んでいる。

札幌市内では4月になると雪壁は全くなくなっているが、

山中ではまだこのような状態であることを始めて知り、

安全を見て冬タイヤのままにしていて良かったと安堵した慎一であった。

地図上で見ると三大秘湖のひとつ『オコタンペ湖』はこの雪壁の向こうだった。

(つづく)

67.痴漢冤罪ビジネスの闇を照らせ2

翔は早速、夕方を待って変装し監視メガネをかけて目的の店へ入った。

明るい店内で可愛い女子高校生の制服を着た写真が壁一面に貼られている。

世の中平和なのか、

まだ早い時間だというのに若い男から中高年くらいまでたくさん並んでいる。

待合の椅子の前の画面に料金や好みの女の子の出演する時間が掲載されている。

薄化粧のクライアントの娘の時間を調べると夕方から4回となっている。

その他、別料金さえ払えば会えるシステムだった。

 

この店の売りは

バーチャルリアリティで本物の女子高生を相手にできる』と謳っている。

キスもその他色々なこと(???)もできるらしい。

コース説明としては

①爆射コース:30分 2万円(延長は20分毎に半額分追加)

       本物の感触であなたを天国に!

       はにかむ女子高生をあなたは調教できるか?!

②お口コース:30分 1万円(延長は15分毎に半額分追加)

       本物の舌の感触であなたをノックアウト!

       まだ慣れていない女の子があなたをパクッ!

③ご奉仕コース:20分 8千円(延長は10分毎に半額分追加)

        何も知らない女子高生がおそるおそるあなたにご奉仕!

        あなたの注文通りに動きます!

 

翔は、とりあえず③ご奉仕コースを頼み、専用小部屋へ案内された。

部屋の中は大きな画面とソファとティッシュボックスが置かれ、

多くのコードに繋がれた小さな箱、ピンマイク、ヘッドフォンがあった。

部屋のスピーカーから声が流れてくる。

「いつもご来店頂きありがとうございます。

 本物の女子高生が慣れない指を使いあなたを天国に誘います。

 なお、女の子は恥ずかしがりなのであなたの顔が見えないようにしています。

 街で出会ってもあなたとはわかりませんので安心してください。

 先ずは、ヘッドフォンを付けてピンマイクを襟へお付け下さい。

 これからシステムを説明させていただきます。

 画面の女の子と話をしながら進んでいきます。

 女の子へ話しかけながら要望を伝えてください。

 そして女の子に奉仕して欲しい時には

 あなたのアソコを手元にあるコードのついた箱へ入れてベルトで固定してください。

 刺激が送られてくるので、女の子にどのようにして欲しいか話してください。

 あなたの希望通りに刺激が送られてきます。さあVRの世界へようこそ!」

(つづく)

26.静香始動

静香は子育ての傍らテレビや新聞で株式投資について勉強し始めた。

お遊び程度のちょうどいい金額の口座にあったことと

子育ての隙間時間で出来るもので稼げるものはないかと考えていた。

中小株の分類に入る会社で、株主優待の送られてくる会社を探し始めた。

夫の好きなコーヒーや子供用に使えるものを探して少しずつ勉強していった。

図書館に行って、『株式入門』『経済ニュースの読み方』『チャートの読み方』なども借りた。

 

財務諸表などの見方や単語の意味などは夫に具体的に聞いて確認していった。

ちょうど夫から『子育て中でもできる収入確保の手段を考えていた』

と言われて『夫婦は以心伝心ね』と笑い返した静香だった。

株式投資は、知らないなら知らないで何も困らないが

現在の社会構造から考えても絶対に必要なことだった。

株に対しては変な儲け意識を持たないように、

気に入った企業を応援して、結果として自分も楽しければと考えている。

多くのお客さんに支えられて長い間小料理屋を経営してきた静香には、

欲張り意識は希薄でほどほどの利益でバランスを念頭に応援する会社を検討している。

夫も『物は試し、がんばって』と笑っている。

 

静香は毎日の生活で意識しやすい食料品関連会社を中心に選定し購入した。

これらの会社からは、株主配当金と株主特典が送られてくるので楽しみだった。

基本的に売ることは考えていなかったので経営の安心のできる会社を選んだ。

 

また、これからの世の中の変化を見る上で何が大きく変るかを考えている。

夫と一緒になる前から携帯電話などの連絡手段がすごいスピードで変ってきているし、

パソコンも各家庭にまで普及し始めていることから考えて、

今後のインターネット関連銘柄がよさそうだった。

しかし、まだまだ新聞やテレビなどの媒体が社会の主なニュースソースで

本当にこのビジネスモデルが儲かるモデルなのか少し信頼が置けなかったが、

とりあえずマスコミで持て囃されているネット会社を二単元だけ買った。

しばらくすると偶然仕手化して買値の倍々ゲームとなり、

怖いくらいの勢いで上がっていく。

とりあえずラッキーにも倍になった時点で1単元は利確できた。

そしてあと一つをいつに利確しようかと考えているうちに元に戻ってしまった。

 

静香は冷静に株価を見ていたが、狂奔した人々の行動は怖いくらいだった。

素人が高値で掴めば、たちまち損失が発生し、

現物売買でない場合にはすぐさま資金がなくなる可能性も高かった。

これ以降、静香は短期勝負の銘柄は避けて、

中長期で利益を積み上げることのできる銘柄を選ぶようになった。

利益目標は、銀行定期より良ければそれでよしとした。

 

また外国為替も勉強して、非常に利率の高い外国通貨への投資も開始した。

中長期的で20%という信じられない利率の通貨があり、

その国の経済状況などを新聞やネットで調査して、

ある程度安定していたのでそちらも運用に入れて、多面的な運用を開始した。

それ以降は常に海外も含めた関連ニュースに注意するようになった。

年度末の企業も多く、年度決算予想が発表され誌上を賑わせている。

子供達もハイハイするようになり、つかまり立ちもし始めている。

二人は離乳食をたっぷりと食べるようになり、部屋の中や廊下などを動き回る。

静香はその目の回るような毎日に幸せをかみ締めている。

(つづく)

66.痴漢冤罪ビジネスの闇を照らせ1

変な女性が出て行ったあと、しばらくすると蒼い顔をした女性が現れた。

事務所を見まわしてソファに座るがなかなか話そうとしない。

じっと待っていると、やがて意を決したように話し始めた。

【依頼内容】

依頼人氏名:愛野 信子様。

依頼人状況:夫が痴漢の濡れ衣を着せられて会社も辞めさせられそうで困っている。

      夫は家族を愛しており、仕事一筋人間なので間違いだと調査して欲しい。

      このままだと裁判で有罪にされてしまう。示談金は500万円。

      用意できない金額ではないが罪を認めたくない。

種類:痴漢の冤罪の証明

経過:帰宅途中の電車の中、目の前の女子高校生が見上げて小さな声を掛けてきた。

   よく聞こうと耳に手を当てて顔を寄せたら、その手を濡れた手でつかんできた。

   驚いて振りほどいたら痴漢にされた。周りの女子高校生の友人も証言している。

   警察の鑑定結果で主人の手に付いていた体液が証拠とされている。

   高校生が主人の手に擦り付けてきたと主張しても信用してもらえない。

 

クライアントが帰って、Ryokoに痴漢の冤罪関連の事件を検索させた。

すると驚いたことに非常に多くの電車での痴漢事件が出てくる。

冤罪被害者と思える投稿もネット上でそこここに見える。

被害者とされた女子高校生の氏名(佐渡千佳 さわたりちか)と学校名はクライアントから聞いているので検索する。

彼女は都内の名門私立女子高校に通っており、顔はLINE上から確認した。

 

学校の評判としては、お嬢様学校で良妻賢母を旨とした教育方針で有名だった。

しかし、ネット上では真贋が混ざった多くの情報で花盛りだった。

その中にJKビジネス関連の噂話も出ている。

新宿にもJKを売りとした店も多く、老若問わず男の需要が多いようだった。

RyokoにJKビジネス店での働く女の子の情報を検索したが、

該当する顔と名前はヒットしなかった。

ラインの写真から場所は割り出せたが、自宅や学校の近辺では

不審な点があれば警察にすぐに通報されやすいため相当に注意が必要だった。

十分な張り込みも出来ないので困っていた。

 

そんな中、事務所へ新しいクライアントが訪れた。

【依頼内容】

依頼人氏名:冴島 留美子様。

依頼人状況:母親(シングルマザー?)

種類:娘の素行調査

経過:ここ2ヶ月ほど娘の行動に不審な面がある。

   最近の傾向として高校2年生の娘(由紀菜)の持ち物が派手になっており、

   帰る時間も遅く、本人に聞いても何も答えない毎日だった。

   事件ではないので警察に相談できない。

   新宿あたりでよく遊んでいるので是非ともお願いしたい。

 

手元の写真を見ると、母親と並んだ明るく笑う女子高生が写っている。

早速、Ryokoに名前と顔を検索させると、ネット上で多くの写真がヒットした。

どうやら新宿のJKビジネスの店『VRホンジョ』でアルバイトしているようだ。

店の紹介では『ホンジョ』は、ほんものの女子高校生の略、

『VR』はバーチャルリアリティ(仮想現実)の略らしい。

クライアントの娘の学校も、偶然とはいえ痴漢の被害者とされた高校生と学校が同じであり、並行して調査することとなった。

(つづく)